牡馬を蹴散らしての快進撃が続いているクリスマスパレード
牡馬を蹴散らしての快進撃が続いているクリスマスパレード

フローラステークス2024

[GⅡフローラステークス(オークストライアル)=2024年4月21日(日曜)3歳牝、東京競馬場・芝2000メートル]

 今年も「樫の女王」への挑戦権を手にせんと、才媛たちがオークスTR・フローラS(東京芝2000メートル)で、府中のターフに集結する。注目は2戦2勝で重賞初挑戦となった“無敗の大器”クリスマスパレード。厩舎番として間近で取材してきた垰野忠彦記者が明かす「わがままお嬢様」の素顔と、ここまでに至る成長譚をご一読いただきたい。

【トレセン発秘話】桜花賞のコラソンビート、皐月賞のコスモキュランダに続き、加藤士厩舎のクラシック戦線“3本の矢”のトリを務めるのが、キタサンブラック産駒のクリスマスパレードだ。トライアルで2着までに与えられるオークスの優先出走権確保を狙う。

 デビューから2戦2勝。いずれも番手から正攻法の競馬で危なげなく押し切っている。才女の性格をひと言で表すと気位が高くわがままな“お嬢様”。カイ食いがいまひとつで実になりにくく、輸送で減りやすい。体重を維持させるのはひと苦労だ。

 担当の安瀬一浩助手は「基本的に人に乗られるのが好きじゃないんですね。馬場入りする際は嫌がってバックするし、立ち上がって振り落とされそうになったこともありました」と苦笑する。

 本番でも装鞍した後に何度も尻っぱねして暴れるなど、随所に気の悪さを感じさせた。ただ、ストレスを発散させると、返し馬からはスムーズ。レースでは前記の通り抜群のセンスを発揮した。

 母が走るごとに気難しさが増したことを踏まえ、陣営は精神面に細心の注意を払って馬づくりに取り組んだ。馬の成長もあり、今回の放牧明けでは立ち上がることも馬場入り拒否もなくなった。

 前走の水仙賞(中山芝外2200メートル)は7頭立てとはいえ、ほかはすべて牡馬。翌日に牝馬限定のデイジー賞(中山芝内1800メートル)があったにもかかわらず、前者を選んだ。「距離が延びていいタイプですし、オークスを見据えれば、初戦(中山芝内2000メートル)から距離を詰める選択肢はありませんでした」(山﨑助手)。一連の成長過程を把握している石川の継続騎乗は間違いなくプラスだろう。

 安瀬助手は「この馬の一番の長所は坂路でしまいまでしっかり動ける脚力でしょう。力の伝え方、バランスがいいのだと思います。結果、レースでも余力を残して最後まで走り切れています。走り出せば操縦性良く折り合えますしね」と指摘する。

 前走は抜け出してフワッとしながらも、後ろから寄られると即反応して突き放した。勝負根性も抜群。晴れ舞台への切符をつかむのはこの馬だ。

著者:垰野 忠彦