日本の研究力向上のため、重要な担い手になる若手研究者を育てるのが大学院の博士課程だ。しかし、修士課程から博士課程への進学者は減少傾向にあり、最近は1割程度の進学率しかない。経済的な事情や卒業後の大学におけるポスト不足など、将来への不安から進学しない選択をしている院生が多いと考えられる。

それでも、「博士課程で学ぶ意義は大きく、メリットもある」と現役の大学院生は語る。この連載では、人文系、社会科学系、理工系など、さまざまな分野の修士課程や博士課程で学ぶ大学院生に取材し、現状をひもといている。4回目は、博士前期課程で国文学について研究している大学院生に、学ぶ意義について聞いた。

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大学院で国文学を専攻

「将来たくさんお金を稼げるようになりたいと考えている人にとっては、文系の大学院はあまり進学する意味がないのかもしれません。専門性を生かして就職することは難しいのが現状です。

けれども、大学院でしかできない研究はたくさんあります。研究を通して自分の考え方を確立するとともに、研究の成果を社会に生かしていくこともできます。文系大学院は、もっと社会に理解されてもいいのではないでしょうか」

「文系大学院で学ぶ意義を感じている」と話すのは、金城学院大学大学院博士前期課程2年生の山口朝香さん。文学研究科で国文学を専攻している。

金城学院大学文学部の日本語日本文化学科を卒業後、就職して1年間働いてから大学院に進学した。研究しているのは鎌倉時代に成立した歴史書の『吾妻鏡』だ。