「ガチャ」という言葉がますます存在感を増している。親ガチャに始まり、上司ガチャ、配属ガチャ、会社にまつわるあらゆるものはガチャ化され、不満や不安の種になっている。配属ガチャに失敗したことで、離職を検討する若手社員すらいるという。

企業組織を研究する東京大学の舟津昌平氏は、Z世代をはじめとする若手社員が直面し、社会を席巻する「ガチャ」について、ガチャ概念のそもそも論から考察する。

本記事では、舟津氏の著書『Z世代化する社会』より一部抜粋・再構成のうえ、「ガチャ」概念について分析し、その問題点を浮き彫りにする。

ガチャ化していく社会

「ガチャ」という概念が浸透して久しい。お金を入れたらカプセルが出てくる「ガチャガチャ」が語源で、ソーシャルゲーム(ソシャゲ)の普及でより一般的になった。「親ガチャ」が最も浸透した派生語だろうか。なぜか「当たった」より「外れた」話しか聞かないのだけど、とにかくそこかしこで頻繁に聞くようになった。

他にも、上司ガチャ、配属ガチャ、などがよく聞かれる。大学では「ゼミガチャ」もあるらしく、筆者はキャンパス内でこう叫ぶ学生に会ったことがある。

「ゼミ、ハズレやわ!課題は楽だからまだいいけど、ゼミ生がハズレ!」

ガチャという言葉はなんだかあまり品がなくて低俗な気がすると同時に、妙に語感がよくて使いたくなるジャンクフードみたいな魔力もあって、ますます浸透している。配属ガチャ、上司ガチャという言葉も、もはや違和感なくメディアで使われるようになってきた。