おなじく急成長を遂げている新興国のインドでは、年間1200万人規模の若者が求人市場に参入するのですが、ITや製造業など主要8業種の求人は、インド全体を合計しても60万〜70万人規模でしかありません。結果として大卒のインド人の大半は、零細の自営業や日雇い契約での小売業・サービス業の仕事に就かざるをえません。

実はインドは女性の労働参加率が25%と低く、かつ男性の労働参加率も57%とそれほど高くはありません。総数2400万人の若者人口の約半分しか就活をしない社会であるにもかかわらず、大学は出たけれどもまともな仕事がない人が大半なのです。

生産性を徹底的に上げていった結果の失業率上昇

「リープフロッグ(かえる跳び)現象」という言葉があります。途上国が最先端技術を導入することによって一気に先進国よりも高い発展を遂げる現象を指しますが、その視点から中国やインドの現状を捉え直すと、ある可能性が見えてきます。これは不況ではなく好況が理由で起きた失業であるという可能性です。

要するにコロナ禍で中国、インドでもDXを強固に推進せざるをえなくなり、業務の生産性を徹底的に上げていった結果、急成長中の大企業が必要とする従業員は日本企業以上に少なくなってしまったのだと捉え直すことができるのです。

日本では大卒の就職者は年間約40万人、20〜24歳の青年失業率は9.0%です。そして就活生の人気が集中する大企業は求人倍率が0.6倍程度です。

これらの数字から、空前の売り手市場の中、就活に成功した学生の数を多めに推定したとして25万人程度。それと比較すればインドの大企業に就職できる学生が70万人しかいないという状況は、インドの巨大な人口を考えるとかなりの狭き門です。