投資を行う際は、個別企業の業績にせよ、マクロ経済にせよ、状況を分析することが大きな武器となります。たとえば、インフレなどは世界的に進行していますが、賃金については国内外で大きな差があり、そこから投資の機会をうかがうことができます。金融ストラテジスト・岡崎良介氏の新刊『野生の経済学で読み解く 投資の最適解』を一部抜粋・再構成し、その状況の一端を垣間見てみましょう。

日本の製造業労働力は国際競争力を持っている

日本の賃金からデフレ圧力が消え、替わってインフレ圧力が広がっていることも事実です。このインフレ圧力を生み出しているのは景気です。この景気を支える三大要素は、消費、投資、輸出ですが、このなかで労働市場にいちばん影響を及ぼすのが、投資です。

たとえばTSMC(世界最大規模の台湾の半導体メーカーです)が、デンソーやソニーと組んで1兆円規模の工場を熊本に建設するという話だけでなく、海外企業の日本への工場建設や、日本企業の国内回帰の動きがここにきて加速しています。

ここまでの日本での工場建設の話は主に、国家的な戦略ともいえる半導体関連の設備投資となっていますが、それだけではありません。様々な角度から分析して、日本でつくることに「利」があるからです。