次の表は、AさんとBさんを、「学生時代/前職の実績」「コミュニケーション力」「入社後の展望」の3つの評価項目からスコア化したものです。

各評価項目を5点満点で点数をつける

「足し算」と「かけ算」、どちらが適切か

スコア化ができたら、その結果を活用して、AさんとBさんのどちらが優秀な人材か、評価を行います。しかし、ここで「スコアの使い方」で意見が割れることがよくあります。評価基準がぶれているとき、たいていの場合、ここに問題が隠れています。

9割以上の人は、シンプルに合計値を算出すればいいと考えます。

<総合評価>

Aさん:5+5+1=11

Bさん:2+3+5=10

よって、Aさんのほうが優秀な人材である

しかし、違った方法で評価するべきだ、という方もいます。その方法とは、次のような考え方です。

<総合評価>

Aさん:5×5×1=25

Bさん:2×3×5=30

よって、Bさんのほうが優秀な人材である

お気づきかと思いますが、両者の違いは「足し算」か「かけ算」かです。さて、あなたはどちらの考え方が正しいと思われるでしょう。

かけ算で評価すべきだと主張する方に、私はその理由を尋ねてみました。するとその答えは次のようなものでした。

「なんとなく、相乗効果っぽい意味の数字になる気がするから」

かけ算は乗法とも呼びます。「相乗効果っぽい」という発言のニュアンスはよくわかります。しかし、私は「あなたがその論法に納得しているならそれでもいいですし間違いと断言はしません。しかし個人的にはここでは足し算を使うのが妥当だと考えます」と説明しました。

そもそも、かけ算とはどういう意味の計算でしょうか。たとえば「2×3=6」という計算は、「2という数が3つある。それを積み上げると6になる」という意味であるはずです。

しかし先ほどのかけ算はそのような意味にはなりません。2というスコアが3つあるという意味ではなく、あくまで「実績」というスコアが2であり、「コミュニケーション力」というスコアが3である、ということでしかありません。本来のかけ算の意味とは違う行為をしていることになってしまいます。

だから、今回のようなケースでは足し算を使うほうが望ましいのです。