さらに、「人間には加齢によって衰える能力と衰えにくい能力がある」と中田さん。イギリスの心理学者、レイモンド・キャッテルが提唱した「流動性知能」と「結晶性知能」のことだ。

パソナマスターズ・代表取締役社長の中田光佐子さん パソナマスターズ・代表取締役社長の中田光佐子さんに、シニアのセカンドキャリア成功術について伺った(写真:筆者撮影)

「流動性知能」とは、直感力や計算力、暗記力、法則を発見する能力など、新しい情報を獲得し、それらをスピーディに処理・操作する能力のこと。20代半ばをピークに60代半ばまで維持され、その後は急速に低下していく。

一方、「結晶性知能」は、言語能力やコミュニケーション力、理解力、洞察力、創造力など、経験や学習によって培われる能力のこと。これらは20歳ごろから上昇を続け、60代以降の高齢になっても維持されやすい。

つまり、「後者の結晶性知能(衰えにくい能力)を活かせる仕事に就ければ、長く活躍することができる」と、中田さんは付け加える。

70代の悩み相談が評判に

74歳のAさんは、後者の能力を活かして働くシニアの一人だ。長年、大手企業で人事経験のあったAさんは、パソナマスターズの紹介により、70歳で中堅機械メーカーの人事部での職を得た。

勤務形態は週3日のテレワーク。社員から寄せられる労務相談の一時窓口としてオンラインでのヒアリングを行っている。

会社員時代に培った労務の知識やコミュニケーションスキル、そして年齢を重ねたからこその落ち着きと包容力で、社員から「安心して相談できる」「聴いてもらえて気持ちが楽になった」と評判だという。

Aさん自身も、「まさか話を聴くだけで役に立てるとは」と、驚きとともに働く充実感を味わえているそうだ。

また、Aさんのように、「再就職先で活躍できる人には、ある共通したマインドがある」と中田さん。