サイバーセキュリティの普及啓発に寄与した作品を表彰する「サイバーセキュリティアワード2023」。その書籍部門で最優秀賞を受賞したのが、『「サイバーセキュリティ、マジわからん」と思ったときに読む本』(オーム社)だ。一般人が「教養」としてのセキュリティ知識を身につけるのに適した本書から、今回はサイバー攻撃の「典型的な手口3つ」を抜粋する。

※本稿は『「サイバーセキュリティ、マジわからん」と思ったときに読む本』から一部抜粋・再構成したものです。

ソーシャルエンジニアリングとフィッシング

サイバー攻撃の典型的な例の1つが、ソーシャルエンジニアリングです。

ソーシャルエンジニアリングとは、人の心や行動の隙をついて、デジタル技術を用いずに、個人が保有する情報を盗み出すことです。日本ネットワークセキュリティ協会では、次のように定義されています。

コンピューターの技術やネットワークの技術を利用するのではなく、侵入に必要なID、パスワードや、企業の秘密情報などを物理的手段(あるいは心理的手段)によって獲得する行為

ソーシャルエンジニアリングは、物理的手段(トラッシング、ショルダーハッキング)と心理的手段とに分けられます。

物理的手段の1つがトラッシングです。トラッシングとは、職場のごみ箱などから重要書類やパスワードの書かれた紙を入手する方法で、映画でもよく取り上げられる有名な手口です。紙だけでなく、PCやスマホなどのデバイスを不正に入手して個人情報やカード情報などを抜き取ることも、トラッシングといえるでしょう。

トラッシング (画像:『「サイバーセキュリティ、マジわからん」と思ったときに読む本』