このことは、為替市場において恒常的に実需の円売りが優勢になっていることを意味する(ここでは経常収支における第1次所得収支の利息・配当や直接投資の流出入は実需としと取り扱わない)。これらを踏まえると、日本株に吹く円安の追い風は当分やみそうにないと予想される。

株主還元策強化や半導体需要増も日本株の上昇を後押し

また、資本効率改善を狙った株主還元策も期待される。4月15日に東京証券取引所が発表した「『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』に関する開示状況(2024年3月末時点)」によると、コーポレート・ガバナンス報告書を開示した企業は東証プライム市場の65%(1065社)となり、2023年12月末(49%、815社)から大きく増加した。

全体の傾向としてPBR(株価純資産倍率)1倍未満の企業ほど開示が進んでおり、変革の意思がうかがえる。これまで、必ずしも重視されてこなかった「資本効率」が大きく取り扱われる中、PBR1倍割れの企業はもちろん、資本効率のさらなる改善に意欲的な企業が、これまでとは違った大胆な株主還元策を打ち出す可能性が示唆される。

2023年は5月に3兆円を超える自己株買いが発表されたことで投資家の要求が満たされ、株価上昇の原動力になったことは記憶に新しい。今年も現在の企業業績から判断すると同程度の自己株買いが期待されることから、自己株買いの規模は現在の年間10兆円ペースを上回ってくるのではないか。なお、年間10兆円という規模はかつての日銀のETF(上場投資信託)買い入れ額(おおむね6兆円)をはるかに上回る。

そして半導体だ。半導体市況をつかむうえで企業決算を読むのは重要だが、マクロ指標も有益な情報を提供してくれる。例えば、4月15日に発表された2月の機械受注統計は半導体市況の回復を印象づけ、日本株の上昇を示唆する結果であった。

機械受注の機種別受注額に目を向けると、半導体製造装置が含まれる「電子計算機等」の強さが目立った。筆者は日本株を読むうえでこの電子計算機等を重視している。その理由は日経平均株価とこの系列が同じ波形を描くからにほかならない。

半導体製造装置の受注動向で日本株全体が説明できるのは、その存在感の大きさがある。まず、日経平均株価に採用されている半導体製造装置の上位3社だけで約16%のウェートを占める。そこに電気機器、化学、機械、精密機器等の業種に分類されている半導体関連企業を含めると、その存在感はさらに大きくなる。

また、半導体工場の能力増強投資にあたって建設にも需要が波及するほか、データセンターの拡大によって電力にも恩恵が及ぶといった副次的効果もある。

これら広義の半導体で見れば、その存在感は大きく、結果的に日本株全体を説明できると考えられる。世界的な半導体市況の好転およびサプライチェーン再構築に伴う半導体製造装置の需要増は、引き続き日本株の上昇を牽引するだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

著者:藤代 宏一