聞けば、少し前から体調に異変を感じていたものの、コロナ禍から病院に行くのを敬遠していたとのこと。「がんかもしれない」という考えが頭をよぎったこともありましたが、「まさか自分が」と、考えを打ち消していたそうです。

コロナが落ち着いてからも、なかなかがん検診を受けようとせず、重い腰を上げて、5年ぶりに検診を受けたところ、一瞬よぎった予感が的中。Aさんは、ショックのあまり現実を受け入れられない様子でした。

そんななかでも、「化学療法が始まって体調が悪くなったり、手術で入院となったりしたら、お母さんの介護をどうしよう」「もしお母さんより、自分の命が先に終わってしまったら……」と、母親の今後を心配しています。「もう少し早く検診に行けば良かった」と、涙ながらに話すAさんは、深い後悔に包まれている様子でした。

コロナで遠のいたがん検診の結果

コロナが感染症法の5類に移行して1年が経とうとしていますが、コロナ禍のがん検診控えの影響が続いている傾向があります。

この記事を読んでいただいている皆さんの中にも、「そういえばコロナが流行してからは、がん検診に行っていない」という人もいるのではないでしょうか。

コロナの流行から、丸4年という月日が経過しています。がん検診は基本的には毎年受けるものです。前回の受診から間が空いている人は、がんのリスクが高くなっていることを自覚して、ぜひ早めに受診しましょう。

がんは、日本人の2人に1人がかかる身近な病気です。早期の段階で見つけて治療をすれば、治る可能性が高い病気です。しかし、諸外国に比べて日本の検診受診率はまだまだ低いのが大きな課題です。

がん検診の目的は、がんを見つけることだけではありません。検診の対象となる人たちの死亡率を低下させることも、目的の1つです。

これまでの研究によって、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの5つのがんは、それぞれ特定の方法で行う検診で早期発見でき、さらに早期に治療することで死亡率が低下することが、科学的に証明されています。