さらに、「では、何によって私のこの防衛反応が引き出されているのか」という視点も出てきます。人によっては「ああ、私は会社の人間関係を拒否したいのかもしれない」という、より本質的な問題に気づくことができるかもしれません。

また、真面目で責任感が強い人、あるいは自己評価が低く、普段、自分の役割をまっとうすること、他者の役に立つことに自分の存在する意味を見出している人ほど、思うように動けない自分を責め、悩み、苦しみを抱えがちです。

「望むような活動をしたい」「求められる役割を果たしたい」という思いはあるのに、どうしても身体が動かない。仕方なく仕事を辞めたり休んだりしているのに、一向に回復する兆しが見えず、「食事をきちんと取ったほうがいい」「身体を動かすといい」と言われても、どうしても動けない。

そんな状態が続くと、やがて、

「何も生み出しておらず、誰の役にも立てていない自分に何の価値があるのだろうか」
「こんな自分のことを、誰が信じ、必要としてくれるのだろうか」
「自分など、いなくなってしまったほうがいいのではないだろうか」

などと考え、思うようにならない自分に怒り、「単に甘え、サボっているだけなのではないか」と自分を責め、ますます自分を追い詰めてしまうのです。

「氷のモード」を肯定的に受け容れてみる

ここで、私が提案したいのは「背側系に入っていることの必要性を理解し、その状態を積極的に肯定していく」ということです。

氷のモードは、悪者ではありません。危機をやりすごして自らの身を守り、エネルギーを節約し、回復に向かうために必要なプロセスなのです。
そのモードにいる自分を否定して、なんとか動こうと抗っていると、いつまでも身体のニーズを満たすことができず、かえって事態を長引かせてしまうということがあります。

ですから、もしいま、みなさんが何らかの原因で氷のモードに入っていて、思うように動けない状態にあるとしても、どうか自分自身を責めないでください。

そして、「引きこもる」「シャットダウンする」という身体的な欲求が必要となったときには、むしろそれに積極的に従っていくことで、徐々に活動性を取り戻し、健全な「ゆらぎ」を取り戻すことができやすくなります。