能登半島地震で被害を受けた富山県射水市の新湊漁港では、ベニズワイガニの漁獲量が平年の2割程度に激減しています。その理由として考えられるのが“カニの生き埋め”。地震によって引き起こされた「海底地すべり」により、大量のカニが生き埋めになった可能性があるのです。同じく地震の影響で、カニを獲るためのカニかごが流されてしまった漁師に聞くと「小さいカニが見当たらない」といい、カニの成長ペースを考慮すると「富山湾のカニが少なくなるのでは」と不安を募らせています。

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富山県射水市の漁師・塩谷久雄さん(63)。海に沈めたかごでカニを取る、この道45年のベテランカニ漁師です。

カニ漁師・塩谷久雄さん
「地震の影響で海底地形が変わって、そこにカニおらんようになったから、おらんとこにカニかご入れても無駄やし…」

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能登半島地震の後、海中に設置していたカニ籠が土砂に埋もれたり流されてしまう被害にあい、2月から漁を再開しましたが、これまで獲れていた場所でカニが獲れなくなったというのです。

カニ漁師・塩谷久雄さん
「7割から8割は例年と比べたら漁獲量が減っとるような感じ」

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富山県水産研究所のまとめによりますと、新湊漁港のカニの水揚げ量は、2023年1月から3月までの間に19トンあったのが、2024年は5.4トンに激減。これは平年の水揚げ量のわずか2割程度にとどまります。

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水揚げが減っただけではありません。ベテランの塩谷さんによりますと、地震後には「小さいカニ」が見当たらなくなったといいます。

カニ漁師・塩谷久雄さん
「小さいカニがおらんってことは、将来的に見たらカニが途絶えてしまって、おらんようになる可能性はあるんですよね。来年、2年先、3年先とみたらどう変わってくるか、ちょっと想像はつきにくいんですけど、富山湾のカニが少なくなるんじゃないかと思っている」

富山県水産研究所はベニズワイガニの漁獲量が減った要因のひとつに、地震による“海底地すべり”があると推測しています。

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富山県水産研究所・三箇真弘研究員:
「海底地すべりによってベニズワイガニが生き埋めになったり、海底の環境が変化して他の海域に移動した可能性などが考えられると思います」


富山県水産研究所の研究では、ベニズワイガニが漁獲可能な甲羅9センチ以上に成長するには9年以上かかることがわかっています。海底地すべりで大量のベニズワイガニが生き埋めになっていた場合は、資源が回復するのに時間がかかると懸念されます。

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富山県水産研究所・三箇真弘研究員:
「小さいものが少ないと、それ今後、大きくなっていったときに漁獲量に影響していくと思うので…小型の個体がどれだけいるというところは調査などでも確認しようと考えている」

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2023年に富山県水産研究所の海底調査で撮影された映像をみると、ベニズワイガニの姿がしっかりと確認できます。研究所では今年も6月に、ベニズワイガニがどのくらい生息しているかなどを地震後はじめて調査することにしています。

富山県水産研究所・三箇真弘研究員:
「実際に漁獲量は新湊地区で大きく減少しておりますし、支援状況についても、この調査で確認していけたら良いのではないかと考えています」

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富山湾のベニズワイガニはどこにいったのか。漁師たちの不安な日々は続きます。