福島県浪江町では脱炭素社会への切り札とされる水素を作り出し、町の至る所で活用しています。東京都では近々、浪江の水素を使ったバスが走ります。

 水素で発電して走る燃料電池バス。東京へ水素を送る浪江町の子どもたちが描いた未来の街「水素タウン」がラッピングされています。

 しかし、浪江はまだ復興の途上にあります。町の面積の大半は現在も帰還困難区域になっていて、そのエリアには原則として立ち入ることができません。

 浪江町は、福島第一原発の事故直後、全町民が避難を余儀なくされ、現在も人口は事故前のわずか10分の1程度です。

 町を大きく変えたのは、世界有数の規模を誇る水素製造施設です。国の研究機関であるNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)などが運営しています。

NEDO 大平英二さん
「こちらの建屋の中に大型の水素製造装置が入っています。左手前方の8本のガスホルダーと言っている大型の水素タンクに一度貯蔵されます」

 7万枚のソーラーパネルから作られた電力を使って水道水を水素と酸素に分解、水素を貯蔵し、需要に応じて地元の様々な施設で利用しています。

 今後は供給先を東京に広げることで水素について広く知ってもらうきっかけになるといいます。

NEDO 大平英二さん
「新しい時代のエネルギーとして新しい形で福島と東京が、もしくは他の地域がつながっていく、その象徴といえるのかなと思っています」

 町には、水素で発電する燃料電池が至る所に設置されているほか、80台の燃料電池車が走っています。町民にとって水素は身近な存在です。

浪江町民
「(水素活用について)環境対策も含めて浪江町が前に立っていることは素晴らしいことだと思います」

 日本が技術力で世界をリードする水素エネルギー。浪江町の挑戦に世界が注目しています。

浪江町 吉田栄光町長
「水素を活用したゼロカーボンシティ(CO2排出実質ゼロ)を掲げています。半世紀先のこの地域やこの町を想像しながら新たな挑戦をしている。(浪江町のような)水素活用をしていく試みがどんどん増えていくのではないかと思っています」