3月29日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「パリで勝つ!〜復活へ!日の丸スポーツメーカー〜」。アスリートに寄り添い、最新技術で記録を支える日本企業の闘いに、ガイアのカメラが独占密着した。

【動画】アスリートに寄り添い、最新技術で記録を支える日本企業の闘い

復活を支える”日の丸水着”開発の舞台裏


3月18日、「東京アクアティクスセンター」(東京・江東区)。競泳「パリ五輪」の代表を決める大会が行われ、100メートルバタフライの決勝には、池江璃花子選手の姿が。
池江選手の水着の開発責任者である「ミズノ」の大竹健司さんは、緊張の面持ちでレースを見守る。

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パリへの切符をかけた決戦の舞台…。池江選手は50mをトップで折り返すも、最後は大接戦。惜しくも優勝は逃したが、3位をわずか0.01秒上回り、パリの代表に内定した。

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「ミズノ」は、2015年から池江選手に水着を提供し、競技生活を支えてきた。
「東京五輪」でメダルを目指す池江選手の水着の開発を任されたのが、大竹さん。しかしその後、池江選手は白血病を公表し、闘病生活を余儀なくされた。
奇跡の復活を遂げた池江選手…「東京五輪」ではリレー種目に出場し、大舞台へと舞い戻ってきた。大竹さんは大会直後から「パリ五輪」に向けた開発を始め、試作品を何度も作り、池江選手に試してもらっていた。

滋賀・大津市にある、「東レ 瀬田工場」。「ミズノ」は3年半前から、池江選手が着る水着の新素材を、「東レ」と共同開発してきた。
「パリ五輪」用に開発したナノデザインの糸を使った新素材は、一見すると普通の黒い生地だが、水滴を垂らして従来のものと比較すると、生地の上にのせた水滴が勢いよく転がり落ちる。水を弾いているためだ。
糸に秘密があり、特殊な加工で溝を作ることで、これまでより撥水性が高まるという。

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こちらは、新素材を30分ほど水中に入れたもので、約6パーセント軽量性が高まるという。「ミズノ」の素材担当・田中啓之さんは、「撥水を高めると、水着の生地が水の中に入った時にすごく軽くなる。選手からすると、“着ていない”ような軽く感じる水着」と話す。

三重・四日市市。大竹さんが新素材を持ち込んだのは、1964年の「東京オリンピック」から、歴代日本代表の水着を製作してきた縫製工場「トーヨーニット」。0.01秒を競う競泳用水着の仕上がりは、寸分の狂いも許されない。

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完成した水着で代表選考会に臨んだ池江選手は、見事「パリ五輪」への切符を獲得した。
水着でサポートしてきた大竹さんは、「すごくほっとしている。パリでは、100%悔いのない泳ぎをできるように支えていきたい」と話す。

アスリートと挑む!“復活のシューズ”


8月、千葉・木更津市。県内有数の実力を誇る高校のバドミントン部を訪れたのは、「ミズノ」のバドミントンシューズ担当・中尾太一さんだ。今回は、「ミズノ」が販売しているバドミントン用のシューズを試してもらい、知ってもらうことが狙い。履いてもらうと、「軽いよね!」「違う!」との声が飛び交う。

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学生たちが元々履いていたシューズは「ミズノ」のものもあるが、そのほとんどは最大手「ヨネックス」のもの。近年拡大するバドミントン関連の市場で一強状態の「ヨネックス」に対し、「ミズノ」のシェアは10%ほどに留まっている。
学生の声に耳を傾ける中尾さんは、「ヨネックスさんが選ばれている現状。試し履きで商品を説明して、実際に履いてもらう活動が大事」と話す。

去年5月、大阪市。「ミズノ 大阪本社」の内部に、一昨年立ち上げた最新鋭の研究開発拠点「ミズノエンジン」がある。
この日、中尾さんは、バドミントン、女子シングルスの奥原希望選手が到着するのを待っていた。

2016年の「リオ五輪」で、シングルス日本勢初となるメダルを獲得したトップ選手で、「ミズノ」はリオの前年に契約。新型ラケットの開発を通じて、活躍をアシストした。

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あれから8年…「パリ五輪」に向けて開発中の新しいシューズを試してもらうことに。
中尾さんは「試合の最後までコートを動きまわれるシューズというところを開発のコンセプトとして進めさせてもらった。奥原選手も少し怪我が増えているというところがあると思うので、ミズノとしても、シューズでより力になれる」。

奥原選手のプレースタイルは軽快なフットワークを武器にした粘り強さだが、ここ数年は足の怪我もあり、苦戦。オリンピックの代表選考レースでも、瀬戸際に立たされていた。
シューズの開発がスタートしたのは2年前。加速性能を高めつつ足への負担を減らすことを目指し、怪我を抱える奥原選手のプレーをサポートするため、ソールの部分に新たに開発した素材を使う。

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新素材は、従来のものと比べると反発性が高いためおもりを大きく跳ね返し、現在のモデルより少ない力で足の蹴り出しが早くなることが期待できる。
さっそく、今回試作したシューズを奥原選手に試してもらうと…。

「つま先の余りと甲が気になる」。

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よく見ると、足の先端部分にしわができていた。奥原選手の合格ラインは80点で、今回は50〜60点と厳しい評価だ。

2週間後。シューズの改良点を話し合い、激しい動きに耐えられるように施した補強パーツがしわの原因だとわかった。パーツのデザインを変更して、一から作り直す。

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「この一足で人生を変えてしまうくらいの責任を感じながら、魂をこめてやらないといけない。一緒に戦っていきたい」と中尾さん。

9月。改良したシューズを奥原選手に履いてもらうが、今度は新たな問題が発生し――。

シェア奪還へ!逆襲の「アシックス」


兵庫・神戸市に本社を置く、国内最大のスポーツメーカー「アシックス」。この日行われた重要プロジェクトの会議に、ガイアのカメラが入った。
プロジェクトリーダーの竹村周平さんが見せてくれたのは、全て開発中のシューズ。この日は、開発からマーケティングまで、約20人の精鋭が集まった。

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そこに現れた「アシックス」廣田康人会長は、「僕らは勝つこと。アスリートに勝ってもらうこと。ベストの商品を出していくことが重要」と話す。

2020年、会長直轄(当時社長)で本格的に始まった「Cプロジェクト」の目的は、トップアスリートに向けた最強の一足を開発すること。「Cプロジェクト」のCとは、「アシックス」の創業者、鬼塚喜八郎の経営戦略「頂上作戦」の頭文字を取ったもの。頂上、つまりトップ選手のニーズを徹底調査して商品化、支持が得られれば、世界で約7兆円といわれるランニングシューズ市場の裾野へと波及するというものだ。

かつて日本のお家芸だったマラソンで勝利を手にしたアスリートの足元には、常に「アシックス」のシューズがあった。しかし、アメリカの「ナイキ」が開発した厚底シューズの登場で、長距離の世界は厚底一色に。2021年の「箱根駅伝」で、「アシックス」のシューズを履いている選手はゼロだった。

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プロジェクトを任された竹村さんは、これまで数々のヒット商品を手がけてきた。
軽量化を目指した薄底シューズで世界を席巻した「アシックス」。過去の栄光を捨て、新たに取り組んだのが独自の厚底シューズだった。
2021年に送り出した初代メタスピードは、このシリーズを履いた選手たちが大活躍。
今年1月には、女子マラソンの前田穂南選手が、19年ぶりに日本新記録を更新したことが話題に。

竹村さんは、「パリ五輪」という次なる目標に向けて動き出す。「アシックス」と契約する選手に集まってもらい、足の形を測定して3次元でデータ化すると、ある特徴が明らかになった。

「日本人の選手は、土踏まずの高さが短い。アフリカの選手はアーチの高さが高い傾向にあって、スリムなので、我々が設計していたシューズとアフリカ人選手のフィッティングを見た時に、ギャップが生じていることを見つけた」。

足形の違いを踏まえた、最強の一足を目指す…。世界中のトップアスリートから膨大なデータと意見を集め、それを「パリ五輪」に向けた新型厚底シューズの開発に生かそうというのだ。

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こうして出来上がった新型の厚底シューズ「メタスピード パリ」は、ソールの材質にこだわり、これまでより約20グラム軽量化して反発力も高めたという。
竹村さんは、新開発のシューズを入れたバッグを持って、埼玉・所沢市にある早稲田大学競走部のグラウンドへ向かう。

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