1979年のデビューから45周年を迎えるメルセデス・ベンツ「Gクラス」。リファインを受けた最新モデルの進化と魅力を、モータージャーナリストの島下泰久さんがレポートします。

誕生45年目にリファインを受けたメルセデス新型「Gクラス」

「ゲレンデヴァーゲン」の名で1979年にデビューしてから、2024年で45年を迎えるメルセデス・ベンツ「Gクラス」がリファインを受けて登場しました。

 私(島下泰久)はその発表に先立ち、「Gクラス」の故郷であるオーストリアはグラーツへとおもむき、実車と対面。開発責任者からじっくり話を聞いてきましたので、レギュラーモデルとAMGモデル、それぞれについて気になる詳細について紹介したいと思います。

 現行「Gクラス」が発売されたのは2018年。形式名“W463”をあえて継承してはいましたが、実際にはフルモデルチェンジ級の改良をおこない、走りの質を大幅に向上させたモデルでした。今回の変更は、それ以来、初めてのものとなります。

 ハイライトのひとつが電動化です。いよいよパワーユニットは全車、マイルドハイブリッド化が図られました。

 新たに3リッター直列6気筒ツインターボエンジンを搭載する「G500」は、エンジン出力が最高出力449ps,最大トルク560Nmを発生。そして、3リッターディーゼルツインターボエンジンを積む「G450d」は、同じく最高出力367ps、最大トルク750Nmを発生します。

 そして2台とも、上記スペックに加えて、“ISG(インテグレーテッド スターター ジェネレーター)”による同20ps、200Nmが上乗せされます。

 特に発進時の強大なトルクによって、オフロード走破性がさらに高められているそうです。

 オフロード走行といえば、ダイナミックセレクトには新たに「トレイル」、「ロック」、「サンド」の3つのオフロードモードが追加されました。これによって走行モードは合計7つから選択できるようになっています。

 外装は、まず4本ルーバーのついたラジエーターグリル、バンパー、ホイールなどの意匠変更が、すぐにそれと分かるところですが、実は最も注目すべきはキャビンの側です。

 よく見ると、ルーフ前端にスポイラーリップが追加され、そしてフロントピラーに装着された樹脂製クラッディングパネルの形状が変更されています。これは空力特性の改善のため。遮音材も追加され、「Gクラス」の弱点のひとつである風切り音の低減を実現しているのです。

 さて、そろそろ室内を見てみましょう。「Gクラス」といえば……の、「カシャッ」と開くドアハンドルはそのまま。ですが、なんと今回、ついに“キーレスゴー”が採用されています。これまでのモデルのユーザーがうらやむこと間違いありません。

 最新世代の“MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)を搭載したインテリアは、それに合わせてステアリングホイールも他のモデルですでに使われている4本スポークのデザインに。これだけでも随分、新しくなったな、という印象です。

 最新の“オフロードコックピット”も搭載されました。呼び出すと眼前のディスプレイに、オフロード走行に有益な方位や角度、車両の各種情報を表示します。“トランスペアレントボンネット”も意外や初採用。360度カメラで撮った映像をベースに、直接目、視できないボンネットの向こう側の路面状況を映し出し、オフロード走行をアシストします。

V8エンジン搭載の「G63」は存在感がこれまで以上にアップ

 なかでも、今回、一層の進化を遂げたのがメルセデスAMG「G63」です。

電動化されたパワートレインや走破性がアップした足回り&駆動系、さらに精悍さを増したルックスなど、全方位的に進化したメルセデス・ベンツ新型「Gクラス」

 まず目が向くのが、一層の迫力を得た外観。3本の縦方向ルーバーが入れられたエアインレットを左右に配した新意匠のフロントバンパーは、これまでよりもさらに押し出しを強めています。

 新デザインの20インチが標準のホイールは、22インチまで6タイプを設定します。

 パワーユニットは、こちらも電動化。現行モデルと同じく最高出力585ps、最大トルク850Nmを発生する“M177”型4リッターV型8気筒ツインターボエンジンに、ISGの20ps、200Nmがアドオンされます。これにより0-100km/h加速は4.3秒を実現。現行モデルから0.2秒を削り取っています。

 そして目玉といえるのがシャシー。“AMGアクティブライドコントロールサスペンション”がついに採用されました。

 これは、従来のアンチロールバーに代わり、4輪の電子制御ダンパーに接続された油圧回路によって車体姿勢を制御するシステムで、すでに「GLE63S」、そして「SL63」、「GT63」といったモデルにも採用されています。

 通常時はサスペンションをしなやかに動かして快適性を保ちながら、旋回中などにはしっかりロールやピッチングを抑える。そんな走りを可能にしてくれるはずです。

“AMGオフロードパッケージプロ”を組み合わせると、さらにふたつの機能が追加されます。

 各輪独立の駆動、制動制御というメリットを活かして、深い砂中などからの脱出を可能にするのが“AMGトラクションプロ”。オフロードドライビングモード選択中にロール剛性を変化させることで、快適性と姿勢制御、接地性の最良のバランスを導き出すのが“AMGアクティブバランスコントロール”です。

 その他の改良点は、ほぼ「Gクラス」と同様。唯一のV型8気筒エンジン搭載車となり、またシャシーが大幅にアップグレードされたことから、今回は「G63」の存在感がこれまで以上に引き立てられたという印象を受けました。

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 それぞれの変更は、決して大がかりというものではないかもしれませんが、得られた果実はとても大きい、進化した「Gクラス」。プレミアムオフローダーのアイコンとしての地位は、今後も安泰であることは間違いないでしょう。

 それにしても気になるのは、今回は何も触れられなかった電気自動車版の「Gクラス」こと「EQG」のこと。近いうちになんらかの発表があるのでしょうか? こちらも注意深く見守っていきたいところです。