家計のためにラーメン店で働く女子高生。明るく仕事に励む彼女を悩ませるのは、とある常連客のおじさんだった。何故だか結婚相手に見定められ、執拗に合鍵を押し付けてくる「合鍵おじさん」の暴走が止まらない……。

Instagram(@negimayo3)とブログ「ここはネギマヨ荘」で、自分たちや周囲の経験をベースに漫画にして発信している二人組のクリエイター、ネギマヨさん。作品の多くはネギさんが作画を、マヨさんが原作と塗りを担当し、家庭でのトラブルや身近に潜む強烈な人物、ストーカー被害などをフィクションを交えた作品に仕上げ人気を集めている。

2023年に制作された「合鍵おじさん〜低スぺ婚活男にタゲられました〜」は、ネギさんが高校時代のバイト先で、思い込みの激しい常連客から一方的に“婚活”のターゲットにされてしまった出来事を描いたシリーズ。

自分の倍以上年齢の離れた常連のおじさん「鍵藤」は、いきなり手を握ったり、部屋の合鍵を渡そうとしたり、ネギさんを恋人と思い込んだかのようなアプローチを連発。理解ができずおびえるネギさんだったが、鍵藤のアタックはだんだん身の危険を感じる領域に至り――、というエピソードだ。

狙われる側からすれば恐怖以外の何物でもない身勝手な婚活に巻き込まれた同作の舞台裏を、作者のネギマヨさんに訊いた。



■「徹底的に気持ち悪く」読者からも嫌われた、弱みに付け込むおじさん
――今回のエピソードを漫画にしたきっかけについて詳しく教えてください。

【ネギ】高校生の無知さや純粋さに付け込んでくる人間がいるというのを大人になってから実感することが増えたんですが、「自分も悪いのかもしれない」と被害にあっても周りに言えないこともあるのではないかと思います。私の体験を漫画にすることで、こういう大人から逃げてほしいという気持ちで漫画にしました。

――ネギマヨさんの作品に出てくる主役の中でも、「合鍵おじさん」こと鍵藤さんは読者からも嫌われ役となったそうですね。こうした反響が集まったことへの思いを教えてください。

【マヨ】うちは女性読者が多いのですが、前作にあたる「俺の手作りおでん食べてください」の肝杉さんは気持ち悪いストーカーですが、キャラクターは人気がありました。ただ、隣人にストーカーされる体験ってあまりないと思うんですね。鍵藤さんの場合は、結構きもい粘着親父に迷惑かけられている方が多いんだと思います。嫌われたのは狙い通りでしたが、もうちょっとエンタメに寄せてもよかったかもしれません。

――鍵藤さんの行為は単なるつきまといを超え、身の危険を感じるレベルも多く作品としてスリリングでした。特に強烈に感じた出来事や、漫画として力を入れたシーンを教えてください。

【ネギ】待ち伏せされて道を塞がれたことが本当に嫌でした!

【マヨ】しかも当たり屋だし、最悪だよね。漫画として力をいれたシーンは車でついてくるシーンですね。

――あまり愉快ではない思い出だと思うのですが、こうした体験を漫画にするうえでのスタンスや、アレンジのポイントを教えてください。

【ネギ】私がマヨに出来事を伝えて、それを元に構成を練ってもらっています。漫画になると臨場感が出て実体験なのに私自身も読んでいてハラハラします。供養してもらっている気持ちです。

【マヨ】ネギさんの話を「ウケる…」と他人事で描いてるときのほうが盛り上がって読者受けがいいです。

――また、鍵藤さんの本心など、実際には分からない部分も多いなかで、一本の作品として成立するためにどう肉付け・補完しているか教えてください。

【マヨ】鍵藤はターゲットである高校生の幼さ・無知さを理解しており、これはそれを利用しようとするグロい話です。なので賛美と思われたくないので徹底的に気持ち悪くし、暗い話にはしたくなかったのでドジなおじさんにしました。合鍵については、意味不明なほうが怖いのもあり、大人でも一瞬捨てていいのか悩むものを高校生で真面目なネギがもらったらより悩んでおもしろいと思いメインにしました。

【ネギ】家の鍵って捨てたら訴えられるんじゃないかとか、いろいろ想像してどうしていいか本当に悩みました(笑)。

取材協力:ネギマヨ