生物的な性別や自認するジェンダーなど、今や外見的な特徴だけで判断できない人の「性」。そんな中、「男子」と「女子」のどちらともつかない出で立ちのクラスメイトと、その性別がわからないまま好きになった少年の青春を描いた漫画「どっちかわからないクラスメイト」が人気を集めている。本作の魅力に迫るとともに、作者の矢尾いっちょ(@1203Yao)さんにインタビューを敢行。本作に込めた思いなどを伺った。


■「『性別』を茶化すことなく真剣に向き合うストーリー作りを心がけた作品です」

明るい青春コメディー的な雰囲気ではありつつも、性別を知って自分の気持ちが変わってしまうことを恐れる主人公・正保や、飄々とした振る舞いに隠されたクラスメイト・愛川さんの葛藤など、ジェンダーを巡るシリアスな悩みもしっかりと描かれている本作。

矢尾いっちょさんは、「中性的なキャラクターに昔から魅力を感じており、僕自身でも描いてみたくなったというのがきっかけです。そのうえで男か女かわからないという設定にして、読者にも考察ができる形にすれば続き物としておもしろいではないか、といったところから本格的な執筆にいたりました」と、本作を描いたきっかけを明かす。

本作はなんと言っても主人公・正保を翻弄する愛川さんの存在に尽きるが、「愛川さんのデザイン決めにはさまざまな中性的なキャラクターを参考にしました。髪の長さは短すぎず、しかしヘアアレンジもできるミディアムショートくらいであることや、寛容さを抱かせる穏やかな目から決めていきデザインを固めていきました。眉毛の太さは最後まで悩み、友人などにも相談した結果太い眉にしましたが、今ではお気に入りのチャームポイントです」と、キャラクター造形のこだわりを告白。

「性別」というテーマを取り扱う上で、キャラクター自身の葛藤にもフォーカスするなど、単なる青春モノに留まらないストーリーも本作の大きな魅力。矢尾さんは「性別の問題はいまだ正解を出せていないことも多く、そこには苦しんだりしている人も多くいる。それを踏まえたうえで、今作はできるだけたくさんの読者に楽しんでほしいのでコミカルな雰囲気に、しかし茶化してしまうことなく真剣に向き合うストーリー作りを心がけた作品です」と、本作への思いを語ってくれた。

2023年11月には第3集が公開され、ますます盛り上がりを見せている本作。最後に矢尾さんは、「第3集にて愛川さんたちの物語は折り返しを迎えました。第4集と最終巻を数カ月以内に公開できるよう、現在作業に勤しんでおります。よろしければ、愛川さんと正保くんたちの行く末を見守っていただけるとうれしいです」とメッセージを寄せた。
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取材協力:矢尾いっちょ(@1203Yao)