WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。「ヒーローズ(コミプレ)」にて 「ヤンキー悪役令嬢 転生天下唯我独尊」(ヴァルキリーコミックス)や、SNS上で発表した作品が書籍化された「全てを筋肉で解決する童話」(双葉社、2024年3月21日発売)などの作品がある赤信号わたる(@GoAkashin)さんのオリジナル作品「ヒミコ様は女子高生」もそうした漫画の1つだ。

タイトルの通り、邪馬台国の女王として知られる卑弥呼が、現代の女子高生「天野ヒミコ」に転生したという設定で描かれる同作。前世では吉凶を占う巫女として擁立された彼女だが、現世では等身大の女の子としての人生を謳歌することを決意。だが、いかんせん一国の女王として生きてきたヒミコは、うっかり鬼道と呼ばれる呪術を使ってしまいがち。

「凄ノ男(スサノヲ)〜!」「天照らすぞ〜?」と独特過ぎるリアクションを交えながら、意中の男子「山戸タケル」を振り向かせようと奮闘するコメディシリーズだ。2023年にX上に1話が公開された際は2万件を超えるいいねを集め、無料電子書籍「赤信号わたるの漫画交差点【短編集】3」の表紙も飾る同作について、作者の赤信号わたるさんに制作背景を取材した。

――呪術的なイメージもある卑弥呼が現代転生という、ある意味説得力あふれる設定です。本作を描いたきっかけやアイデアの発端を教えてください。

【赤信号わたる】卑弥呼という女性は日本人なら大抵の人が知っているのにも関わらず、出生や経歴が謎に包まれすぎていてドラマなどにはしづらいところがあります。それを女子高生にすることで新しいストーリーが描けるのではないかと思いました。

――歴史上の人物の中でも、卑弥呼はその人物像がほとんどわからない存在ですが、読者としてはこれをすんなり卑弥呼だと飲み込めるキャラでした。キャラクター作りはどのように膨らませたのでしょうか?

【赤信号わたる】仰る通り、実像がわからないので勝手な想像でしかないのですが、卑弥呼という人物を考えたときに混迷の時代に周りにシンボル的存在として祭り上げられた部分もあったのではないかと思いました。そうでなくても相当苦労したのは間違いないと思うので、もし現代に転生したら反動でめちゃくちゃ青春を謳歌しようとするだろうなと考え、あのようなキャラクターになりました。

――赤信号さんの作品は読者の予想を上回る展開も多いですが、本作はヒミコの内面や行動に着目した王道展開に感じました。作品の方向性はどのように考えられましたか?

【赤信号わたる】先述の通り、卑弥呼は普通の青春に憧れを抱いているので、作中で起こるイベントは基本的には王道展開にしようと思いました。でも古代の感覚を引きずってるので結果的に変な行動に走ってしまうというお話ですね。

――ちなみにヒミコが恋する男子・山戸タケルも意味深な名前です。実は…という裏設定もあるのでしょうか?

【赤信号わたる】自分の中での設定はあるのですが、タケル君が例のタケルの生まれ変わりか、それともたまたまなのかはギリギリ読者さんにはわからない塩梅で描こうと思っています。

取材協力:赤信号わたる(@GoAkashin)