富士市北東部、自然豊かな神戸地区に、素材を生かした小さなパン工房「Bakery412」がオープンしました。国産の素材にこだわる、ブルーベリー農家の息子夫妻が始めたお店です。

住宅の一角にパン工房オープン

Bakery412(富士市一色)

青葉台小学校の北西、富士市一色の住宅や畑が広がるエリアにできた「Bakery412(ベーカリーヨンイチニ)」。

ベーカリーののぼり旗が目印です。表通りから1本入った場所にあります。

自宅の一階をパン工房に改装

入口は建物の東側にあります。

店長の杉山太一さんが2024年1月25日に自宅を改装してお店をオープン。

杉山さん夫妻

太一さんと妻の好(このみ)さん夫妻が店を切り盛りし、太一さんの母・京子さんもお店に立ってサポートしています。

412はパンの記念日

気になるお店の名前の412は、日本で初めてパンがつくられたパン発祥の日だそうです。パンを作ったのは反射炉を造った韮山の代官、江川太郎左衛門で、歴史の勉強になりました。

実は店長夫妻の結婚記念日でもあり、お店の名前を考える中で4月12日がパンの記念日だとわかったそう。自分たちの記念日が偶然にもパンの記念日と重なったことで、「412」は2人にとってより大切な数字となり、店名に入れることに決めました。

国産材料へのこだわり

Bakery412では6種類ほどのパン生地を用意して、食パンやデニッシュ、おかずパン、フランスパンなどを作り分けています。

Bakery412・杉山太一 店長:
国産材料にこだわり、フランスパンやライ麦系以外のパン生地は全て北海道小麦とてんさい糖を使っています。ショートニングやマーガリンを使わず、素材そのものの味を大切にしたパン作りを心掛けています

好さんが伊豆稲取のイチゴ農家出身であることから、伊豆産の紅ほっぺやニューサマーオレンジ、キウイを使用したパンも並んでいます。ソーセージも静岡県産など産地のわかるものです。

パンは完売してしまうことも多く、売り切れ次第閉店です。午前9時頃が一番種類がそろっているので、早めの来店がおすすめです。

ブルーベリー農家だから作れる逸品

一番の人気は「杉山ブルーベリーブレッド(1斤900円)」。

柔らかな口当たりと、割ってびっくり、あふれんばかりの自家製ブルーベリージャムが入っています。

店長の両親が営む農園・杉山ブルーベリーで育てたブルーベリーがふんだんに使われています。大粒のブルーベリーは店の北側の畑で収穫されます。

生地にはブルーベリーから起こした自家製酵母も練りこまれて、ほんのり色づいています。

果実を使った自家製酵母 

果物らしい味・色・香りを追求したくて、自家製酵母を起こしましたが、それだけでは発酵までに時間がかかりすぎました。発酵力のある国産酵母も加え、割合を試行錯誤しながら出来上がりました。

一人1本に限定しても1カ月先まで予約でいっぱいの人気ぶりです。

ブルーベリーブレッドが予約でいっぱいのため、ハード系のブルーべリーパン、ブルーベリーデニッシュなど自園のブルーベリーを使用したパンを増やしているところです。

スタッフのおすすめパン

店長おすすめ湯種食パン

太一店長のおすすめは「湯種食パン(1斤450円)」です。

北海道産の小麦を使い、湯種法で作ることで、ふわふわもちもちの食感です。湯種を寝かすために13時間かかりますが小麦の甘みを引き出せる製法です。

Bakery412・杉山太一店長:
ハチミツや生クリームを使わなくても、製法で小麦の甘みを引き出せます

そのこだわりにパン職人の心意気を感じます。

1斤買って帰ると、子供がバクバク食べてあっという間になくなってしまいました。小さい子供も喜んで食べる食パンです。

取材の日は「湯種あんまき食パン(1斤900円)」や「湯種レーズンブレッド(1斤900円)」も並んでいました。

好さんおすすめシフォンケーキ シフォンケーキ(220円) 画像提供:Bakery412

好さんおすすめは「シフォンケーキ(220円)」。

富士市の後藤養鶏の卵をたっぷり使用したふわふわ食感のシフォンケーキ。べーキングパウダー不使用です。シフォンケーキは好さんが作っています。

京子さんおすすめ苺デニッシュ 苺デニッシュ(280円)

京子さんおすすめは「苺デニッシュ(280円)」。

好さんの実家、稲取にあるたむらファームのイチゴと、富士市の後藤養鶏の卵を使用した自家製カスタードをのせたデニッシュです。

家族のサポートで改装

太一さんは、辻調理師専門学校でパン作りを学び、静岡県内のスーパーでパン製造の経験を積んできました。

いつかパン工房を開く日を夢見て、自宅を建てる際にスペースも確保してありました。

できるところは自分たちで行おうと、カウンターなどDIYでコツコツ作り準備しました。

階段は納屋に使われていた大谷石を活用

庭や駐車場の石垣は、稲取から好さんの家族が駆けつけて作ったのだそう。実家のユンボも活躍したそうで農家の底力を感じます。

階段や飛び石には杉山家の納屋に使われていた大谷石が生かされていました。

この夏はフレッシュなブルーベリーのパンを

富士山の見えるブルーベリー畑 画像提供:Bakery412

2024年の夏にはオープンして初めてのブルーベリーシーズンを迎えます。

Bakery412・杉山太一店長:
夏になれば旬のフレッシュなブルーベリーを使ったパンを作るので楽しみにして下さい。ブルーベリー農家だからできるパンを作りたいとワクワクしています。夏は収穫もハイシーズンになります。開店して初めての夏なので収穫作業との両立を模索しています

ブルーベリーの収穫があるので7月以降、営業が変則的になる可能性があるそうです。営業日はインスタグラムで確認してください。

テラスの先には自園のフェイジョア

ブルーベリーだけでなく栽培している「フェイジョア」も商品化したいと話していました。ファイジョアはパイナップルグァバの別名を持ち、洋梨のようにまろやかな食感の南国フルーツです。

Bakery412はおいしいパンを通して、地域の農産物の魅力を発見するきっかけを提供してくれます。自然の恵みとアットホームな温かさを味わいに、出かけてみてください。

店内の様子

コーヒーもテイクアウトできるので、暖かくなったら庭のテラス席で過ごすのもいいですね。

■店名 Bakery412
■住所 静岡県富士市一色436-6
■営業時間 8:00〜17:00(売り切れ次第終了)
■定休 水・第1と第3木
■問合せ 070-8312-0412
■駐車場 5台

文/本多佐和子 撮影/山口美香子