「フィット」「プリウス」「ワゴンR」……かつてバカ売れしたクルマのいまは? 最盛期と現在を比べてみた

この記事をまとめると

■かつて日本でもっとも売れた車種の最盛期と今の売れ行きを比較してみた

■どれも数値は落ちているがこの記事ではその理由を分析している

■他社ライバルではなく同社内のほかの車種に顧客が移った例もある

発売当初は売れに売れたあの車種の現在はどうなっている?

 クルマの売れ行きは浮き沈みが激しい。かつて好調に販売されながら、今では伸び悩む車種も多い。その経緯を探ってみる。

■トヨタ・カローラ(シリーズ合計)

・最盛期:1973年/1カ月平均登録台数:3万3800台

・2022年の1か月平均登録台数:1万1000台

 国内販売総数の推移を振り返ると、好景気の絶頂だった1990年の778万台がもっとも多く、そこから下降を開始した。2022年はコロナ禍の影響も受けて420万台だ。

 ところがカローラは1973年がピークで、1カ月平均3万3800台を登録した。2022年の3倍以上だ。2022年に国内販売の1位になったN-BOXの1カ月平均1万6800台と比較しても、当時のカローラは2倍以上だ。

 1973年のカローラは、2代目のモデル末期だったが、2ドアと4ドアのセダン、2ドアクーペ、バンという具合にボディを豊富に用意して好調な売れ行きを誇った。当時の売れ筋カテゴリーはセダンで、クーペにも勢いがあり、カローラは上質なクルマを割安な価格で提供して人気を高めた。ちなみにスカイラインも、国内販売のピークは1973年で、4代目が1カ月平均で1万3000台を登録した。

 カローラはその後、セダンとクーペの販売低迷に伴って売れ行きを下げた。それでも2022年の1カ月平均登録台数は1万1000台だから、販売ランキングの上位に入る。カローラシリーズの2022年における販売内訳を見ると、もっとも多いのはSUVのカローラクロスで、シリーズ全体の45%を占めた。2位はワゴンのツーリングで21%になる。つまり、今のカローラはSUVとワゴンが支えている。

■スズキ・ワゴンR

・最盛期:2000年/1カ月平均届け出台数:2万400台

・2022年の1か月平均登録台数:6900台

 初代ワゴンRは1993年に発売され、1994年の1カ月平均は1万800台だったが、モデル末期の1997年には1万7300台に達した。通常は発売直後がもっとも多く売れ、時間を経ると低下するが、初代ワゴンRは逆だ。時間の経過に伴って、その価値がユーザーに理解されて広がりを見せ、売れ行きを伸ばした。

 そして1998年には2代目になり、2000年には1カ月平均届け出台数が2万台を超えた。

 この後も暫くは堅調に売れたが、2008年にスライドドアを装着したパレットが加わるとユーザーを奪われ、2013年にスペーシアに切り替わると、ワゴンRは売れ行きをさらに下げた。2011年にはホンダから初代N-BOXも加わり、軽自動車の売れ筋はスーパーハイトワゴンに変わっていった。2022年の1カ月平均登録台数は6900台に留まる。

ライバル車種とのシェア争いで商品の特徴が目立たなくなった

■トヨタ・プリウス(シリーズ合計)

・最盛期:2012年/1カ月平均登録台数:2万6500台

・2022年の1カ月平均登録台数:2700台

 初代プリウスは、世界初の量産ハイブリッドとして1997年に発売された。もっとも多く売れたのは2009年に発売された3代目で、東日本大震災を挟んで2010年と2012年には、それぞれ1カ月平均で2万6000台以上を登録した。

 人気の秘訣は優れた商品力だ。3代目は2代目に比べて動力性能と居住性を向上させ、安全装備も充実させながら、価格は2代目インサイトに対抗して割安だった。販売系列も、2代目はトヨタ店とトヨペット店だが、3代目はカローラ店とネッツ店を加えて全店扱いになっている。

 しかし、その後はトヨタの幅広い車種にハイブリッドが用意され、4代目の先代型は外観も不評だったから、プリウスは売れ行きを急落させた。2022年の1カ月平均登録台数は2700台だから、最盛期のわずか10分の1だ。

 そこで2023年に発売された5代目の現行型は、低燃費や実用性ではなく、モーター駆動による走りの良さという付加価値に重点を置いた。全高も40mm下げて重心を低く抑え、居住性や乗降性よりもカッコ良さを優先させて、外観は5ドアクーペ風に変更されている。

■ホンダフィット

・最盛期:2002年/1カ月平均登録台数:2万900台

・2022年の1カ月平均登録台数:5000台

 初代フィットは2001年に発売されてヒット作になり、2002年には1カ月平均2万900台を登録して国内販売の1位になった。全高を立体駐車場が使いやすい高さに抑えながら、燃料タンクを前席の下に搭載して居住空間と荷室が広い。1.3リッターエンジンは実用回転域の駆動力が高く、燃費性能も優れていた。しかも価格は主力グレードのAが114万5000円と安く、ヒット作になった。

 ところがこの後、ライバル車も競争力を強め、2011年にはN-BOXが加わった。フィットは身内のホンダ車にも顧客を奪われ、売れ行きを下げた。