海外のディーラーマンはライバル車に乗るなんて当たり前! 自社扱い車しか乗れない日本のディーラーは80年代を引きずりっぱなし

この記事をまとめると

■日本のディーラーマンは自社扱い車以外の使用を禁止していることがほとんど

■海外では他社製品を通勤で使用することも当たり前だ

■日本のディーラーはバブル期の名残をまだ色濃く残しているので変革が必要だ

海外ではディーラーの営業マンは好きなクルマに乗れる

 先日、インドネシアの首都ジャカルタを訪れたとき、ジャカルタ近郊の新興開発地域にあるBYDディーラーを見に行った。平日にもかかわらずショールームは大勢の来店客でにぎわっていた。様子を見る限り、商談をしている人というよりは、試乗を待つ人たちがショールームで待機しているという感じであった。2024年1月からインドネシアでの国内販売を始め、すでにバックオーダーが1400台になっているというから、現地でのBYDの立ちあがり時点での売れ行きはかなりいいといっていいだろう。

 そんなBYDディーラーの奥の駐車スペースに、中国チェリー(奇瑞汽車)の「オモダE5(BEV/バッテリー電気自動車)」が停めてあった。聞いてみると、そのディーラーのスタッフのマイカーとのこと。ライバル比較も兼ねて乗っているのかもしれないが、同じ中国系メーカーのライバル車ともいえる車種に乗り、しかも出社できることに少々驚かされた。

 日本の新車ディーラーでは、通勤や日々の営業活動で使うクルマについては自社扱い車以外の使用は事実上禁止されている。これはたとえ扱い車であっても、資本の異なる、つまりライバルディーラー(例えばカローラ店に勤めていてカローラに乗っているが、購入したのはトヨペット店といったパターン)で購入したクルマはダメということもあるようだ。

 しかし、インドネシアではプライベートで他メーカー車に乗ることはお構いなしのようである。事実、通勤や仕事用に限ってとはいえ、自社扱い車しか乗ることができないというのは、筆者が聞いた限りでは日本だけの話といえるようだ。

 南カリフォルニアのある日系プレミアムブランドディーラーを訪れたときに、その店のゼネラルマネージャーが店舗敷地内に停めてあった、購入したばかりの自分のBMWを自慢げに見せてくれた。その店の人に聞くと「扱い車に乗っているスタッフはほとんどいませんよ。仕事とプライベートは異なりますからね」と当たり前のようにいわれた。

いまだに80年代の特徴が受け継がれている

 日本では自社扱いの新車を購入するときは、「社員購入規定」のようなものがあり、充実した特別条件で購入することができるのが一般的。なお、南カリフォルニアで聞いたときは、リースを組むと「月々のリース代はそれほど価格が高くない車種ならば、ディーラーとメーカーで負担してくれるので自己負担しなくてよい」といったことが多いようだ。それでも自社扱い車に乗らないというのは、前述したとおりに仕事とプライベートをきっちりわけているということになる。

 この「日本では扱い車以外仕事では使えない」というのは、かつて訪問販売が主流だったころの名残りともいえよう。それこそ大昔はお客から下取りした自社扱い車に乗っていたセールスマンだが、バブル経済のころは扱う新車に乗るようにと変わってきたようだ。当時、展示車はそのまま販売していたので未登録が当たり前で、試乗車というものがほとんどないため、お客の自宅などへ自分たちの新車を乗っていき、試乗してもらったりしていたようである。

 令和のいまでは、店頭販売がほぼ当たり前となっており、訪問販売はほぼなくなっているので、あえて扱い車にこだわる必要もなくなっているが、いまも日本ではそれが当たり前となっている。

 南カリフォルニアだけではなく、新興国でクルマ社会の本格化がこれからともいえるインドネシアでも、他メーカー車に乗って通勤できるのを見ると、日本の新車セールスマンが仕事だけといっても自社扱い車にしか乗ることができないというのは、これもある意味「ガラパゴス日本」なのかもしれない。

 筆者はかねがね日本の新車販売現場はいまもなお、80年代を色濃く残していると実感している。多様化の進むなか、「売るのならば自社扱い車がおすすめ」というロジックで他メーカー車に乗るセールスマンというほうが説得力があるようにも見える。新車販売現場も働き手不足に悩んでいるので、こういう細かいところも含めて「フルモデルチェンジ」する時期にきているようにも見える。