シビック・タイプRが3台も参戦で「タイプR好き」なら注目必至! チーム力とドライバーの腕が勝敗を分けるS耐のST-2クラスから目が離せない

この記事をまとめると

◾️4月20〜21日にスポーツランドSUGOにて「ENEOSスーパー耐久シリーズ2024」が開幕した

◾️ST-2クラスでは、昨年度チャンピオンを獲得した新型シビックタイプRに注目が集まっている

◾️今回はST-2クラスでシビックを駆る3チームに密着し、その模様をお届けする

スーパー耐久ST-2クラスでのシビックの戦いが熱い

 2024年4月20〜21日に、ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONEが宮城県のスポーツランドSUGOで開幕しました。全9クラスあるなかで、今年の注目はST-2クラスのホンダ・シビックタイプRではないでしょうか。その戦いに注目してみましょう。

 スーパー耐久は全部で9クラスに分けられます。

 ST-X:GT-3車両
ST-Z:GT-4 車両
ST-TCR:TCR規格に準じた車両
ST-Q:メーカーが未来に向けて行う開発車両
ST-1:ST-2~ST-5以外の車両
ST-2:2400cc~3500ccまでの4輪駆動および前輪駆動車両
ST-3:2400cc~3500ccまでの後輪駆動車両
ST-4:1500cc~2500ccまでの車両
ST-5:1500ccまでの車両

 現在ST-2クラスにはランサーエボリューションX、GRヤリス、シビックタイプRが参戦しています。いままでは4輪駆動の車両がシリーズチャンピオンをずっと獲得していましたが、昨年はシビックタイプR(FL5型)が前輪駆動車として初のシリーズチャンピオンを獲得したことにより、注目を浴びることとなりました。

 そのシリーズチャンピオンを獲得したのが、743号車ホンダR&DチャレンジFL5です。

 名前を見てピンと来るかもしれませんが、ホンダの社員が自己啓発活動として、業務時間外にマシン製作やメンテナンスを行い、レースウィークに合わせて休暇をうまくやりくりして参戦しています。

 2019年に先代シビックタイプR(FK8型)でスポット参戦を行ったことからS耐への参戦が始まり、2022年からフル参戦となり、2023年に現行シビックタイプR(FL5型)参戦初年度でシリーズチャンピオンを獲得するという躍進を見せています。

「2024年もフル参戦を行い、シリーズ2連覇に向けて活動を行っていくつもりです。人材育成というのがこのチームの主目的ですので、今年も新たに参戦するメンバーが増えたことは非常に喜ばしいですし、アメリカから日本に駐在することになった社員が参戦するなどグローバルなことも視野に入れています。もちろん次の車両に向けての開発も一部行っていく予定です」とチーム代表の木立氏はいいます。

 そんなホンダR&Dチャレンジチームに挑むかのように、今年は新たに72号車OHLINS CIVIC NATSと、95号車SPOONリジカラCIVICがシビックタイプRで参戦を開始しました。

 72号車はレジェンドドライバーである山野哲也選手が率いるチームで、昨年まではST-5クラスにてロードスターで戦い、シリーズチャンピオンを獲得しています。

 シビックタイプRでの参戦について山野選手は「いまのホンダのなかで一番熱量のあるマシンでレースができることに感謝します。ホンダの社員だったこともあり、過去に多くのホンダ車でレースをしてきましたが、じつはホンダ車でのレースは2004年のMテックNSX以来。さらにFF車という意味では多分1998年のチーム国光のインテグラが最後だと思います」と、久しぶりにホンダ車でサーキットレースをできることに喜びを隠しきれない様子。

 もう1台の95号車SPOONリジカラCIVICは、その名のとおり、ホンダ車チューニングの代表格であるSPOONが開発を行い走らせるシビックタイプRです。

「レースは我々のなかでは常に製品の延長線上にあるもので、出られる車両とレースがあれば常に参戦しようと考えています。昨年、アメリカのサンダーヒル25時間レースで、ひと足先にこのFL5型でレースデビューしているのですが、やはり日本のファンのみなさんにも戦っている姿を見ていただきたいという思いと、車両開発のタイミングがうまく合致したので今シーズンに参戦することにしました」と、ブランディング部マネージャーの城本氏が説明します。

気になるレースの結果をお届け!

 ST-QクラスにもシビックタイプRが参戦しています。こちらはHRCが主導となり、カーボンニュートラル燃料を使い、次世代のスポーツカーの開発を目的に参戦しています。ST-Qクラスは車両の開発が目的でもありますので、大型の前後スポイラーなども装着し、空力解析などを実戦のなかで収集することも行われています。

 ST-2クラスの予選結果は225号車KTMS GRヤリスが一番タイム、以下95号車SPOONリジカラCIVIC、72号車OHLINS CIVIC NATS、743号車ホンダR&DチャレンジFL5、7号車新菱オートVARIS☆DKL☆EVO10、13号車エンドレスGRヤリス、6号車新菱オートDXL夢住まい館EVO10と合計7台での戦いです。

 今回の開幕戦は4時間耐久ということで3回ピットインを行い、レースを繋いで行きます。

 結果は1位225号車KTMS GRヤリス、2位 72号車OHLINS CIVIC NATS、3位95号車SPOONリジカラCIVIC、4位13号車エンドレスGRヤリス、5位743号車ホンダR&DチャレンジFL5、6位7号車新菱オートVARIS☆DKL☆EVO10、7位6号車新菱オートDXL夢住まい館EVO10となりました。

 GRヤリスの速さは以前から注目を浴びていましたが、開幕戦でポールtoウインを果たしました。シビックタイプR勢は2・3・5位という順位になりました。

 初出場で2位表彰台を得た山野選手は、「車両が来たのが今週で、そのままレースに参戦しました。セッティングなどを見つけ出す作業もそうですが、レースに出ること自体が大変でした。NATSの学生も大変ななか準備をしてくれました。その結果、2位表彰台を得られたのは非常に良い結果だと思います。ただ、人間に例えると筋力などがまだ全然ついていないよちよち歩きのような状態です。まず戦える身体に仕立て、そこから上位を目指すようにしていかないといけない。これには時間がかかると思いますが、じっくり育てていきたいと思います」と、まだ始まったばかりながらも2位表彰台を喜んでいました。

 3位になったSPOONは、「レースなので順位は出ますが、順位だけにこだわらず、あくまでも製品開発の延長線上のことなので、多くのファンの方に喜んでもらえるようにしていきたいです。国内レースがひさしぶりだったこともあり、SCやFCYでのタイミングでどのような作戦をとるかなど、少し経験不足な部分もありましたが、今後経験を積んでいけばいいことかなと思っています」(城本氏)と、冷静に現状を分析していました。

 チャンピオンチームとして挑んだ743号車ホンダR&DチャレンジFL5の木立氏は、「ピット作業違反やコース上でのスピンなど反省することが多くあった今回でしたので、次戦に向けてそこは立て直していかないといけません。新しいライバルが増えたことにより車両が違うことをいい訳にできなくなりましたが、そのぶん目標が明確になった部分もあります。人材育成をしつつも車両のアップデートも行い、2連覇に向けて気を引き締めていきたいと思います」と語ります。

 ST-Qクラスに参戦していた271号車ホンダシビックタイプR CNF-Rはパワステのトラブルが出てしまい、残念ながらリタイヤとなっていまいました。

 今シーズンはST-2クラスにもう1台シビックタイプRが参戦するとの情報も出ており、ますます激戦になり目が離せないシーズンとなりそうです。次戦はスーパー耐久のなかでも最大のイベントとなる富士24時間レースが5月25〜26日に開催されます。

 ディフェンディングチャンピオンの743号車ホンダR&DチャレンジFL5が今回のミスを修正し、勝ちを狙いに行くと思われます。 72号車OHLINS CIVIC NATSはST-5での経験も豊富です。95号車SPOONリジカラCIVICはアメリカの25時間レースを経験しているので、万全の対策をしてくるでしょう。

 今年のST-2クラスのシビックタイプRの熱い戦いに注目です。