240km/hで走る芝刈り機! 275km/hでバックできるスーパーカー! クルマ関連の世界一は調べれば調べるほど想像の斜め上だった

この記事をまとめると

■「速さ」や「大きさ」などの数値で測れるものには絶対的な「世界一」のクルマが存在している

■世界一小さいクルマやバック走行の速いクルマなどいろんな種類の世界一を集めた

■前進時最高速度世界一の量産車はSSCノースアメリカの「トゥアタラ」の508.73km/h

ギネスで世界記録として認められたクルマたち

 E24こと初代BMW6シリーズは、自動車メディアにおける多くの記事で「世界一美しいクーペ」と評されることが多い。だが筆者はその見解には大反対である。いやE24のことが嫌いなわけでも何でもないのだが、「世界一美しいクーペといったらディーノ246GTだろ!」と確信しているからだ。

 とはいえ、ここで「世界一美しいクーペ」についての論争を始めても意味はない。なぜならば「美しさ」というものに絶対的な基準はなく、人それぞれが勝手な基準というか好みでもって勝手に感じているのが「美」であるからだ。

 だが、「速さ」や「大きさ」などといった数値で測れるものに関しては、確かに絶対的な「世界一」が存在している。

 たとえばギネスブックによれば「世界一小さなクルマ」は、英国のマン島にあったピール・エンジニアリング・カンパニーが1960年代前半に作っていた「ピール P50」という3輪のマイクロカーだ。

「大人ひとりにショッピングバッグひとつ」をコンセプトに開発されたピールP50のボディサイズは全長1340mm×全幅990mm×全高1000mmという超絶ミニマムなもので、エンジンは最高出力4.2馬力の49cc2ストローク。これはDKWのモペッド用エンジンを流用したものであったらしい。それでも最高速度は一応61km/hは出たという。

 なお、P50にはリバースギヤが存在していなかったとのこと。後進する際はリヤバンパーの中央付近に備わったハンドルでもって、まるでキャスターバッグのように引っ張って方向転換したのだとか。

 リバースといえば、「リバース走行速度世界一のクルマ」は、これまたギネスブックによればリマック・ネヴェーラというハイパーEVで、じつに275.74km/hの超高速でバックできるのだという。

 リマック・アウトモビリ社はクロアチアを拠点とするEVメーカーで、創業は2009年。そしてリバース走行速度世界一となった「ネヴェーラ」は、2021年6月に発表された同社のハイパーEVだ。

 ネヴェーラには4個のモーターが搭載され、4輪を個別に駆動する4モーター合計で最高出力1940馬力を発生。0-96km/h加速は1.85秒で、最高速は412km/hであるとのことだが、恐ろしい勢いでの前進とおおむね同程度の勢いで後進できてしまうリマック・ネヴェーラの姿を生で見たとき、私は「おおっ!」と感激するのか、それとも「うわ……」という感じで引くことになるのか、自分でも想像がつかない。

世界最速の芝刈り機の最高速度は240km/h

 275.74km/hでバックするネヴェーラも見てみたいところだが、クルマはやはり前に進んでナンボなので、本当に気になるのは「前進時の最高速度世界一」だ。そしてギネスブックによれば、前進時最高速度世界一の量産車はSSC(シェルビー・スーパー・カーズ)ノースアメリカの「トゥアタラ」なるハイパーカー。ネバダ州の道路で532.7km/hを計測し、ギネス認定対象となる「往復平均」では508.73km/hをマークしたとのこと。

 SSCノースアメリカは1999年に創業されたアメリカの自動車メーカー。オーナーはジェロルド・シェルビーという人物で、前社名は「シェルビー・スーパーカーズ」だった。だが、ジェロルド・シェルビー氏は自動車デザイナーのキャロル・シェルビーとはまったくの無関係ということで、シェルビーアメリカン社との混同を避けるため、2012年1月から「SSCノースアメリカ」に改名された。

 で、そんなSSCノースアメリカが作る「トゥアタラ」は、ミッドに独自開発の6.9リッターV8ツインターボエンジンを搭載するハイパーカー。最高出力は1750馬力で、最大トルクは1736Nmとのことだが、もはや数字的に凄すぎて何がなんだかわからない。そしてトゥアタラがネバダ州でマークした532.7km/hという最高速度は、旧日本海軍が使用した零式艦上戦闘機二一型の最高速度とおおむね同じである。

 零式艦上戦闘機の最高速度はもう少し速いほうがよかったと思うが、クルマで500km/h以上の速度を出すのもかなりアレであるため、お次は「長さ」という基準で見てみよう。

 ギネスブックが2022年3月に認定したところによれば、「世界一長いクルマ」は、全長なんと30.54mのスーパーリムジンである「American Dream」。このリムジンのベースとなったのは1976年式キャデラック・エルドラドで、映画やテレビ用のクルマを専門とする自動車コレクター、ジェイ・オーバーグ氏が1986年に製作したもの。その時点でのAmerican Dreamの全長は18.28mだったが、その後30.54mまでストレッチされたらしい。

 American Dreamの装備は「ウォーターベッド」「飛び込み台を備えたプール」「ジェットバス」「ミニゴルフコース」「ヘリポート」などという夢のような内容(?)で、75人以上を収容可能。とはいえ長すぎる全長ゆえ公道には駐車できず、現在はフロリダ州オーランドにある「デザーランドパーク」内の自動車博物館で展示されているらしい。

 最後に、これを「クルマ」と呼ぶべきかどうかはさておき「世界最速の乗用芝刈り機」としてギネスブックに認定されたのが、ホンダの「Mean Mower V2」だ。

 Mean Mower V2はホンダの芝刈り機「HF2620」をベースに、ホンダの英国ツーリングカー選手権におけるパートナーだった「Team Dynamics」がモディファイを加えたもの。

 エンジンは、ホンダのレーシングバイク「CBR1000RR Fireblade SP」に搭載された999cc直4を採用。このエンジンは最高出力189馬力を発生させるが、Mean Mower V2の重量はわずか約140kgということで、そのパワーウェイトレシオはブガッティ・シロンをもしのぐことになる。

 で、そんな芝刈り機がドイツのサーキット「Dekra Lausitzring(デクラ ラウジッツリンク)」で世界記録に挑戦したところ、時速0-100マイル加速の平均は6.29秒で、最高時速は150.99マイル(約242.99km/h)をマークすることに成功。ちなみにマクラーレン650Sの時速0-100マイル加速が5.7秒なので、Mean Mower V2は「芝刈り機のくせにスーパーカー並みの加速力」ということになる。

 なおMean Mower V2には芝刈りブレードと芝回収ボックスも搭載されているため、いちおう芝刈り機として使うこともできるらしい。