2024/12/17 13:29

「トヨタは正しかった」は誤解?

考える

世界的に電気自動車(EV)販売が失速するなか、ハイブリッド車(HV)販売が急速に伸びている。

日本市場にいたっては23年度の乗用車販売台数としてはHVが192万台で全体の50%を占めるのに対し、EVは8万台で全体のわずか2.1%にすぎない。

こうした市場の変調を受け、EV開発に注力したことで北米市場にHVを投入できず大幅な減益に陥っている日産自動車と対照的に、EVよりHVの開発を優先させ好業績が続くトヨタ自動車をめぐり

「なぜ判断を誤らなかったのか?」

という点が一部で話題を呼んでいる。

トヨタは世界に先んじてHV開発に取り組んできた。

1997年に世界初の量産ハイブリッド乗用車「プリウス」を発売し、現在、世界のHV市場でシェア1位。

豊田章男会長が今年1月の講演で

「いくらBEV(バッテリー式電気自動車)が進んだとしても市場シェアの3割だと思う」「エンジン車は必ず残る」

と語った言葉に象徴されるように、EV開発には慎重な姿勢を示しており、同社初の量産型EV「bZ4X」を発売したのは日産に遅れること12年、2022年に入ってのことだった。

26年までに世界で年間150万台のEVを販売するとの目標を公表していたが、9月にはこの計画数値を3割引き下げて100万台程度にすると発表した。

現在の状況を受けて、EVに前のめりにならなかったトヨタの経営判断をめぐり、

「やはりトヨタは正しかった」
「なぜ間違わなかったのか」
「なぜHV需要が高まると読めたのか」

などと注目されている。

自動車業界に詳しいジャーナリストの桜井遼氏は語る。

「大前提としてトヨタは巨大な系列グループ内に多くの部品メーカーを抱えているため、グループを維持していくためには、内燃機関車と比べて部品点数が大幅に少ないEVが市場の主流になると困るという事情を抱えています」

「豊田会長はこれまでもたびたび自工会の会見などで『車がすべてEVになるという考えは間違っている』という主旨の発言を繰り返していますが、その延長線上にある発言ととらえるべきでしょう」

「また、業界リーダーのトヨタがEVシフトに否定的な姿勢を見せることが、トヨタと異なり資源が限られているため取捨選択して一部のカテゴリー車の開発にしか注力できない競合他社に圧力をかけることにもつながっています」

「トヨタはマルチパスウェイを掲げて全方位戦略をとっていますが、それは資金力のあるトヨタだからこそできることであり、他社はEVやエンジン車など一部のエネルギー車に注力せざるを得ません。特に日産の場合はカルロス・ゴーンの時代から研究開発費を絞っており、加えてHV開発には大きく出遅れていたことから、EVに集中せざるを得なかったという事情があります」

「現在は一時的にHVが復調傾向でEVが失速していることで、トヨタに追い風が吹いているものの、世界全体の自動車市場をみるとHVが突出して比率が高いというわけではなく、今後世界のメーカー各社がEVを投入してラインナップが揃ってくれば、徐々にEVのシェアは伸びてくるでしょうから、状況が大きく変わる可能性はあるでしょう」

ちなみにEVについては、以前6月7日付のBusiness Journalの記事で、日本大学理工学部教授の飯島晃良氏が以下のように語っている。

「「EVの走行時のCO2排出量はゼロですが、発電時に排出されるCO2やレアメタルなど原材料の採掘や廃棄までライフサイクル全体で考えると、EVの環境負荷はエンジン車と比べてドラスティックに減るとはいえないでしょう」

「重量が増すとブレーキやタイヤなど制御面の負荷が増し、エネルギー効率が低下するため、モビリティにおいては軽いということが非常に重要です。現状、EVのモーターやインバータの変換効率は通常90%以上であり、これ以上向上する余地は小さいので、航続距離を延ばすためには、より多くのバッテリを積む必要があります。理論的にはバッテリを積めば積むほど航続距離は長くなりますが、その分、車体の重量は重くなるのでエネルギー効率が悪くなります。搭載するバッテリの数量が増えれば、製造に伴う排ガスなどの環境負荷も増えることになります」

「結果的に、欧州のEVシフトの本来の目的であるCO2排出量の削減、環境負荷削減と結びつかなくなってしまいます」

「欧州が掲げるEVシフトには、EVを増やすほど不合理な点が顕在化する事項が多く含まれるため、どこかの局面で見直しを迫られる可能性もあります」

伊樹、その他詳細はBusiness Journalをご覧ください。

「HV重視のトヨタは正しかった」は誤解?EVシフト否定は単なる自己都合 | ビジネスジャーナル「HV重視のトヨタは正しかった」は誤解?EVシフト否定は単なる自己都合 | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部