「赤いきつね」無視を決め込むのは正しい?
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東洋水産が今月16日に公開した「赤いきつねうどん」のウェブCM。
女性が夜、部屋で一人で「うどん」を食べるというだけのアニメーションだが、「不快」「気持ち悪い」との批判的な声が続出する一方、「何が問題なのかわからない」という反論も出るなどして議論を呼んでいる。
そんな中、当の東洋水産はコメントを出さずにメディアの取材にも応じず、「無視」の姿勢を貫いていることが注目されている。
危機管理・広報コンサルタントで、長年、企業・自治体の管理職向けに模擬緊急記者会見トレーニングや危機管理広報、SNSリスク対策研修・セミナーの講師なども手掛けてきた平能哲也氏は語る。
「企画意図等の一切についてコメントしないという態度は良いと思います」
「アニメなどは各人の受け止め方も様々なので、企画意図などをコメントして、それがまた反論を呼ぶという流れになるのは避けるべきで、その点で今回の対応は企業の危機管理広報として正しいです」
「ただし、メディアからの問い合わせに対して、回答していないのであれば、それは疑問です。制作会社は声明文を出しているので、例えば『今回の件について当社からのコメントはございません。制作会社が声明文を出されているので、そちらを参照していただければと思います』などのメディア対応はすべきです」
「メディア側からすれば、企業の広報に問合せしているのに回答を受け取れない=無視されているというのは、あまり良い気持ちはしないと思います。『コメントしない』という回答も、企業側からのメッセージになります」
企業の危機管理広報の観点からはどうだろうか。
「メディア側に『この会社は都合が悪い時はコメントしない』と誤解を与える対応はマイナスでしかありません。前述のような『コメントいたしません』という回答になっても、きちんと対応するのがスマートで適切だと思います」
「ネット記事の見出しなどに『企業側は無視』といった言葉があれば、内容を知らない読者は企業に対してネガティブな印象を持つでしょう。企業広報やアドバイスしている外部専門家はそこまで配慮すべきです。それがプロです」
大手メーカーで広報業務の経験がある管理職は語る。
「昨年、ネットで炎上した企業は謝罪やコメント削除などの対応をすると、対応しない場合よりも株価が大きく下落するという東京大学大学院の研究論文が話題になりました」
「『無視を決め込む』というのは広報の危機管理対応としては選択肢の一つです。ただし、企業側に非がないという世論形成が期待される場合に限りますが、東洋水産に擁護的な声も多いため、このような対応をしているのかもしれません」
「今回の件でいえば、果たして本当に炎上といえるほどネットの反応が熱を帯びたものなのかという根本的な疑問もあります」
「SNSに批判コメントを投稿する人々がいる裏には、特に問題だと感じていない『その他大勢』のサイレントマジョリティーが存在しており、またSNS上では批判的な言動のほうが大きく拡散されてクローズアップされやすいという傾向があるため、批判している人がごく一部であるにもかかわらず、あたかも炎上しているかのように世論がミスリードされるということも起こり得ます」
「企業の広報がそこを見誤って過剰な反応をしてしまい、無用に騒動を大きくしてしまうことには注意が必要です」
今回のウェブCMをめぐっては、生成AIを利用しているのではないかという指摘や、クリエイター個人を特定して誹謗中傷を行う動きも広まっているが、制作を手掛けた株式会社チョコレイトは、毅然と反論を行なっている。
ウェブCMをめぐる騒動が続くなか、今月19日以降の東洋水産の株価がそれ以前より1割ほど上昇していることも注目されている。
毅然とした対応が好材料になっているとの見方もあるが、メガバンク系のファンドマネージャーによると、
「株価上昇はウェブCMの件とは関係ないといってよいでしょう。19日に日本経済新聞が、東洋水産の株主である投資会社が東洋水産に株主還元の強化を要求していると報じたことが株価上昇の材料になったと考えられます」
とのことだ。
以上、その他詳細はBusiness Journalをご覧ください。
編集者:いまトピ編集部