コンサートチケットの不正転売に『開示請求』「本人確認の徹底が必要」
音楽ライブや舞台、スポーツイベントなどにおいて、問題となり続けているのがチケットの不正転売。2019年に「チケット不正転売禁止法」が施行され、営利目的などで不正にチケットを入手・転売して逮捕されるケースも増えているが、それでもなおチケットの高額転売はなくなっていない。
そんななか、今年9月5日、STARTO ENTERTAINMENTが、チケットの個人売買仲介サイト「チケット流通センター」を運営するウェイブダッシュに対して、転売目的の悪質な出品者の発信者情報開示請求を行ったと発表した。
実際チケット流通センターを見てみると、STARTO社所属のアーティストのチケットが多数出品されている。定価と近い価格の出品だけでなく明らかに高額な価格での出品もあり、それらを営利目的の不正な転売と見るのは自然なことだろう。
昨今、チケットの不正転売を防止するために、いくつかの芸能事務所やプロ野球球団では公式のリセールサービスを実施している。チケットを取っていたものの、何らかの都合で行けなくなった場合に、ほかの人に購入してもらうサービスだ。公式のリセールサービスにより、不正に出品されているチケットを買う人を減らせるという目的だ。
しかし、STARTO社では公式のリセールサービスを行っておらず、結果的にチケット売買サービスの利用を含めた不正転売が多くなるとの指摘も多い。音楽業界関係者はこう話す。
「公式リセールがあれば、わざわざチケット売買サービスに出品する人も減るだろうし、高額で出品されているチケットを買う人も減るでしょう。STARTO社が公式リセールを始めれば、多少は事態も好転すると思います。ただそもそも問題となるのは“良席”を求めて、高いお金を払ってチケットを購入するファンがいるということですね。そういったファンがいる限り、高額での転売を根絶するのは難しい」
STARTO社のライブの場合、ファンクラブでチケットが当選すると、紙チケットが郵送されてくるのではなく、入場時に必要なQRコードが付与されるケースが多い。会場でそのQRコードを読み取ると簡易的な紙チケットが発券され、そこで初めて席が決まるというシステムになっている。事前に席がわからないということであれば、良席を高額で転売することも不可能だと思われるが、実際には転売が行われているという。
「入場に必要なQRコードを複数持っているファンが、それをあらかじめ複数のファンに売り、同時に入場するわけです。売り手のファンは座席が判明した紙チケットを一旦回収し、その中のいちばん良い席を自分用として抜く。さらに、その他のチケットを開演までの時間で転売したり、交換したりしたうえで、最終的に買い手のファンたちに分配する、というケースが横行している。つまり売り手のファンは、会場内でチケットを転売し、差額を利益にしたり、良席を掴んだりしているんです。こういった行為が行われているため、単純にリセールを導入しただけでは、問題は解決しないと思います」(20代/STARTO社所属グループのファン)
ではチケット転売を根絶するには、どういった施策が必要なのか。エンタメウォッチャーの大塚ナギサ氏はこう話す。
「まず本人確認の徹底です。入場時だけでなく座席での本人確認も必要かもしれません。不正にチケットを入手したことが発覚した場合のペナルティーも重要です。一発で出禁やファンクラブ永久追放にするなどの厳しい処分があれば、転売を避ける人も増えるはずです」
さらに、“良席”のメリットを下げていくという考え方もある。
「メインステージを中心とした構成だと、どうしてもメインステージ近くの席だけが“良席”となってしまう。しかし、ステージを複数設置するとともに花道を増やして、メンバーたちが会場内のいろいろな場所でパフォーマンスをする構成にすれば、結果的に良席が増えます。同時に、メインステージの最前列であっても必ずしも良席ではなくなってくる。
すでにSTARTO ENTERTAINMENTのアーティストに限らず、いろいろなアーティストが採用している方法ですが、こういった形で、より多くの座席が良席に近づいていくようなステージ構成や演出も大事だと思います。もちろん大きな会場の場合、スタンド後方の席などどうやっても良席にはなりえないわけですが、そういう席は価格を下げてもいい。結果的に“良席がすべて”とならないようなコンサートになれば、良席を高額で買うことが無意味になってくる。もちろん限界はありますが、“良席をなくす努力”は必要でしょう」(大塚氏)
誰もが公平にその楽しみを享受できるのがエンターテインメントというもの。不正転売を根絶するために、業界が取り組むべき課題は多い、と日刊サイゾーが報じている。
編集者:いまトピ編集部