2024/12/22 14:50

船井電機、最悪の結末か

謝罪

10月に東京地裁に破産手続きの開始を申し立てた一方、12月に代表取締役会長が東京地裁に民事再生法の適用を申請するという異例の事態が生じている船井電機。

その同社の破産申し立て側の関係者が、主力事業であるテレビ事業を中国企業に売却する交渉を進めていると報じられている。金融業界関係者は「要は船井の潤沢な現金に目をつけた者が現金を抜いた上で、テレビ事業を中国企業に売り飛ばして船井をもぬけの殻にしようとしている」と指摘する。

 2000年代には液晶テレビ事業で北米市場シェア1位となり、4000億円近い売上高を誇った「世界のフナイ」が、業績悪化により出版社の秀和システムの子会社・秀和システムホールディングス(HD)に買収され上場廃止となったのは2021年のことだった。


 

 混乱が続くなか、10月には取締役の一人で創業家の関係者とみられる人物が準自己破産を申し立てて、東京地裁から破産手続き開始の決定を受けた。全従業員も即時に解雇されたが、準自己破産の申し立て直前に代表取締役会長に就いていた原田義昭氏(元環境相)は、破産手続き開始の決定の取り消しを申し立て、さらに今月2日には東京地裁に民事再生法の適用を申請し、受理された。

売却交渉自体が効力を持たない可能性も
 そして今回、破産申し立て側の関係者がテレビ事業を中国家電大手の創維集団(スカイワース)に売却する交渉を進めていることが明らかになった。船井電機HDの23年3月期の「事業報告」によれば、同社の売上高818億円のうちテレビ事業である映像機器事業の占める割合は89%に上る。M&Aに詳しい金融業界関係者はいう。

「中国企業への売却の話を聞いて、『あ、なるほど』と納得しました。要は船井電機から吸い取れるだけ現金を吸い上げて、もう吸い上げるものがなくなった段階で最後にテレビ事業を売っぱらって退散するという魂胆でしょう。テレビ事業を売却した後の船井電機には、ほぼ何も残らないため、法人としては消滅するしかありません。事実上、船井電機が中国企業に売り払われることになり、最悪の結末といえるかもしれません。おそらくは全て最初からおおよそ描かれていたストーリーでしょう。百歩譲って船井側にメリットがあるとすれば、テレビ事業の経営権が中国企業に取られるものの、全員ではないとしても従業員の雇用は維持され、いったんは支払われないと通知された未払い分の給与が支払われる可能性が出るという点でしょう。その意味では、全体でみると当初の単なる破産というかたちに比べるとソフトランディングといえるかもしれません。

 ただ、気になるのは、テレビ事業売却の交渉を進めているのが破産申し立て側の関係者という点です。破産の申し立てを行った人物はすでに取締役から外れているとみられ、そもそも交渉を進める権限を有しているのかが疑問です。もし民事再生法に基づく再建を進める意向の原田会長をはじめとする経営陣の了承を取らないまま進めているのだとすれば、交渉自体が効力を持たないものになるかもしれません。そして、おそらくですが船井の現経営陣の了承は取っていないと考えられます」

 別の金融業界関係者はいう。

「破産を申し立てた関係者は当初、なんらかの理由でとにかく早く会社を閉じようと動いていたものの、蓋を開けてみると、閉じるにも税金の支払いや債務の返済などいろいろとお金がかかるのに加え、給与未払いの上で解雇された元従業員から集団訴訟を起こされるリスクなどもあるとわかり、慌ててテレビ事業を売却してキャッシュをつくろうとしているのかもしれません」

船井電機社長を退任した上田氏、退任直前に経営権を1円でファンドに売却か
 12月3日付「朝日新聞」記事によれば、9月に船井電機社長を退任した上田智一氏が退任直前に同社の経営権を1円でファンドに売却し、さらに上田氏と同氏が所有する会社が船井電機から借りていた11億円超の返済を免除する旨もファンドとの間で取り交わされていたという。いったい何が起きていたのか。


「最近、大手・中堅の仲介会社が特定のストロングバイヤーに対し、潤沢な現金を持っている会社を買い取る話を持ち掛け、買った側はすぐに現金を抜いてどこかに消えるという事例が増加しています。船井電機もその被害にあったようにしか見えません。ただ、会社規模がとても大きいことに加えて、M&A界隈では有名なある企業も絡んできたりして話題になっていましたが、経営者が1円で経営権を譲渡したという話には『そんな手があったのか』ととても驚きました。

 オーナー企業は株主と社長が同一なので、社長がやりたい放題にやれます。なぜならば、利益相反行為だろうが何だろうが、株主代表訴訟の標的になりえないからです。船井電機は非上場化することによって事実上オーナー社長が経営する状態となり、社長のやりたい放題になったということです。そして資産が底をついて“もぬけの殻”になったところで、手続き的には法に背かずに残りカスの法人を消滅させ、社長はファンドに経営権を売って、さらに『社長が船井電機に借りている11億円超は返さなくていいからね』という約束をファンドと取り交わすことで、合法的に借金を早期に帳消しにしたわけです。この手法には驚きしかありません。ただ、なぜそこまでするのかは不明ですが、いろいろなものをセットで処理したいという意図があったからだと推察されます。

 報道では船井電機の社長が経営権をファンドに譲渡したとされていますが、本当にファンド形式で運営していたとしたら出資者がいるので、1円で取得した会社が持っていた11億円以上の債権を放棄する、さらには条件によっては1円で買い戻させるということは、許されることではありません。なぜなら、ファンドは利益を上げて出資者に還元しなければならないからです。よって、純粋なファンドではない存在である可能性も考えられます」(金融業界関係者/12月4日付当サイト記事より)
と、ビジネスジャーナルは報じた。

「船井電機は現金を抜き取られた挙句に中国企業へ売り払われる」最悪の結末か | ビジネスジャーナル「船井電機は現金を抜き取られた挙句に中国企業へ売り払われる」最悪の結末か | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部