2025/2/17 10:53

「去ってほしい社員の条件」7カ条、話題に

泣く

日本を代表するアニメ制作会社であり、昨年には宮崎駿監督の映画『君たちはどう生きるか』が米アカデミー賞授賞式で長編アニメーション映画賞を受賞したスタジオジブリ。そんな同社の事務所内に掲出されている、以下の7カ条からなる「去ってほしい社員の条件」が社訓ではないかとSNS上で話題となっている。

・知恵のでない社員 
・言わなければできない社員
・すぐ他人の力に頼る社員
・すぐ責任を転嫁する社員
・やる気旺盛でない社員
・すぐ不平不満を云う社員
・よく休みよく遅れる社員

 Business Journalの取材に対しスタジオジブリは「社訓ではない」と説明するが、どのような位置づけのものなのか。同社、同社と関係の深い人物への取材を交えて追ってみたい。

『となりのトトロ』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』など数多くの大ヒット映画を生み出してきたアニメ制作会社のジブリ。『天空の城ラピュタ』制作時の1985年に徳間書店によって設立され、同作のヒットを足掛かりに、当時では珍しく企画から制作までをこなす独立系で、かつ原則長編アニメーション映画だけを手掛けるアニメスタジオとして、宮崎氏と高畑勲氏の両監督を中心に次々とヒットを連発してきた。アニメーターの低賃金化が定着していた業界で、先駆けてスタッフの正社員化と固定給化により待遇改善を図り、のちの業界全体の待遇改善に寄与したともいわれている。

そんなスタジオジブリの社内に掲げられた前述の「去ってほしい社員の条件」が話題を呼んでいる。同社の代表取締役でプロデューサーの鈴木敏夫氏の部屋に貼られたものだが、SNS上では同社の社訓か経営理念ではないかという声もある一方、

<これは鈴木敏夫プロデューサーが「潰れた会社にこんなのが貼ってあった」と言って持ってきたモノで、「こんなつまらない事やるから潰れるんだ」と言うアンチテーゼだと聞いたことがあります>

<皮肉、反面教師として掲示したのだと思います>

<鈴木Pの皮肉なのかギャグなのか半分真面目なのか>

などとさまざまな見方が寄せられる事態となっている。

 そこでスタジオジブリに話を聞いた。

「これは鈴木プロデューサー(P)の部屋に現在も貼られていますが、社訓などではありません。2000年に公開された『式日』(庵野秀明監督)の撮影で山口県宇部市内に行った際に、とあるビルのゴミ箱に捨てられていたものを鈴木Pが面白いと思って拾って持って帰ってきたものです。かつて弊社でプロデューサー見習いをしていたドワンゴ創業者の川上量生さんもこれを気に入って、自分の会社に貼っていたようです。弊社では、この7カ条を朝礼で読むこともありませんし、社員に読ませることもありません。これを持ち出して社員に退職を迫るということもありません」

 では、鈴木Pはこの7カ条の内容に肯定的なのか。逆に、ここに書かれた条件に該当する社員を排除するような企業は潰れるという意味で貼っているのか。

「それについて本人が何かを言ったことはないので分かりませんが、気に入っているということなのだと思います」(同)
かつて宮崎駿監督に師事した経験を持つアニメーション・映像監督で大阪成蹊大学芸術学部長・教授の糸曽賢志氏はいう。

「あくまで想像ではありますが、私の知り得る鈴木Pの性格を考慮すると、まったく賛成できないものは貼らないでしょうから、書かれた内容に対して“肯定的(笑)”というのが正直なところではないでしょうか。ただ、『その通り』だと考えているとも解釈できますし、逆に『こういう内容をエラそうに貼っていると、誰も社員がついてこなくなる』と否定的な意味で貼っているとも解釈できるかもしれません。物事は表裏一体なので。

 クリエイターとして個人的には、一緒に働く人にはアイディアを出してほしいと思いますし、一を言っただけで『そこまでやってくれるの?』と驚くレベルまでやってくれる人と働きたいと思うので、私自身はこの7カ条の内容に特に疑問は感じません。すぐに他人に頼ったり、やる気がない人とは私も働きたくはありません。ただ、その考えを人にも強要したいとは思いませんけどね。

かつて私は、ありがたいことに宮崎監督に師事する経験をさせていただいたので、宮崎監督の働き方や考え方に強い影響を受けているのは事実です。例えば一つのシーン演出を考えるのにカメラワークや演技の仕方など、それこそ無数に手法があったとします。何かひとつ面白いアイデアを考えついたら、すぐにそれを採用とするのでなく、大変かもしれないけれども時間の許す限り限界までアイデアを捨てて新しいアイデアを出し続け、考え得る全ての方法を描き、できる限り100点の出来ににじり寄る、それが当たり前だというのが宮崎監督の考え方だと思います。

実際に私が体験したお話をさせていただくと、ジブリ美術館で上映する短編映画などの企画を考えられていた時期に、ある少女漫画を原作とする映画をつくれないかと、その場にいた皆さんで議論してストーリーを広げているとき、私が提出したストーリーアイディアに対し宮崎監督は『イマイチ』とおっしゃったんです。私は宮崎監督と接することに多少慣れてきていたこともあり『お言葉ですが、これ絶対面白いですよ』というような反論じみたことを言ったのです。生意気ですよね。その後、1週間くらいたったある日、宮崎監督は私が話したそのストーリーを絵コンテに描いて私に見せてくれたのです。宮崎監督が描いた絵コンテなので演出の観点では素晴らしい内容ではありましたが、確かにアニメーションのストーリーとしてはあまり面白くありませんでした。宮崎監督は一人の演出志望の見習いが言ったことに対して、どうすれば自身で気づき、一番学びにつながるのかを必死に考え、自身で手を動かしてくださった。その姿勢を見て、本当に尊敬したし、誰に対しても常に必死にやることは当たり前なんだという考えをお持ちなのだと感じました。当の本人である私は、当時大ファンの宮崎監督が自分のストーリーを絵コンテにしてくれたことに舞い上がり過ぎて、その絵コンテを受け取った瞬間から全然宮崎監督のお話が頭に入ってこなかったのですが。もちろん、その絵コンテは今も私の宝物として大事に取ってあります。

 ちなみに7カ条に書かれている遅刻については、宮崎監督は非常に厳しかった記憶があります。面接に遅刻してきた人に対して一言も質問せずに落としたという話は、落とされたご本人から半分笑い話として伺ったこともあります。今も大活躍されている方なんですけどね。。」

と、ビジネスジャーナルが報じた。

スタジオジブリ「去ってほしい社員の条件」は社訓?宮崎駿監督の働き方の神髄 | ビジネスジャーナルスタジオジブリ「去ってほしい社員の条件」は社訓?宮崎駿監督の働き方の神髄 | ビジネスジャーナル

編集者:いまトピ編集部