『吉野家』2013年に販売終了「伝説のメニュー」復活、12年ぶりに30店舗のみ

大手牛丼チェーンの吉野家が、かつて高い人気を誇りながらも2013年に販売を終了した“伝説のメニュー”「牛鍋丼」を一部店舗のみで販売再開させていることが話題を呼んでいる。吉野家の「牛丼」はご飯に牛肉とたまねぎから成る「アタマ」が乗ったものだが、アタマを減らした代わりに白滝と豆腐を入れた「すき焼き」が乗ったもの。価格はかつての280円(並盛/税込)から157円値上がりして437円となっているが、「牛丼 並盛」(498円)よりは安い。気になるのは、なぜ12年ぶりに突如として復活したのか、また、なぜ公式サイト上やリリースでも告知をしていないのか、そして、全店舗での販売はいつ頃の予定なのかという点だ。吉野家への取材を交えて追ってみたい。
店舗数ベースでは「すき家」に次ぐ牛丼チェーン2位で国内1259店舗(2025年1月現在)。主力メニューの「牛丼 並盛」(松屋は「牛めし」)の価格を比較してみると、吉野家は498円、松屋は430円、すき家は450円となっており、大手牛丼チェーン3社のなかではもっとも高価格となっている。穀物肥育の北米産牛肉の「ショートプレート」を使用しているのが特徴で、仕入れ後は工場の熟成専用冷凍庫で2週間かけて熟成しながら解凍するというこだわりの強さ。ライスに使用する米は国産米を中心に外国産をブレンドしたものを使用している。
吉野家といえば、すき家と松屋が大半の店舗にタッチパネル式券売機を設置するなか、
「お客様とのコミュニケーションが何より大切だからNO券売機!」
「吉野家は券売機を導入していません。これは『こんにちは』『ご注文はお決まりですか?』『ありがとうございました』といったやりとりを、お客様一人ひとりの顔を見ながら行いたいから」
と謳い、お客が店員に口頭で注文を伝え、会計も対面で行うことを重視してきたことでも知られている。だが、ここ数年は注文用のタッチパネル式端末を各席に配置する店舗を徐々に増やしており、テイクアウト用の注文については店舗入り口付近に専用タッチパネル式端末を設置している店舗もある。
このほか、商品面での変化としては、「から揚げ」メニューに注力しており、現在では「から揚げ丼」(575円)、「にんにくマシマシから揚げ超特盛丼」(1084円)、「から揚げ黒カレー」(674円)をはじめ、単品の「から揚げ」(151円)も含めて計14のから揚げ系メニューを提供している。
そんな吉野家をめぐって一部で話題となっているのが、「牛鍋丼」の復活だ。2010年から販売されていたが、13年に終売となっていた。当時は人気メニューの一つだっただけに、再販を受けてSNS上では以下のような声があがっている。
<復活ありがたい>
<大学生の思い出の味>
<美味すぎて今日も食べにいきました>
<見つけたら即食べるしかない>
ちなみに現在、吉野家では期間限定で「牛すき鍋膳」(877円)、「牛すき丼」(688円)も販売されているが、「牛鍋丼」が牛肉とたまねぎ、白滝、豆腐という構成なのに対し、「牛すき丼」は牛肉とたまねぎ、白菜、ねぎ、人参、絹豆腐と具材の数が多い。
取り扱い店舗の名前は公表されていないため、食べられるかどうかは運次第というところだが、復活の理由や全店舗での販売時期について吉野家はBusiness Journalの取材に対し以下のように説明する。
「お客様からの復活の声をいただいており、今回改めて関東圏の30店舗での実験販売を開始いたしました。今後については、まだ実験段階ですので、ご回答は差し控えさせていただきます」
ちなみに、味付けは「牛丼」とは違うのだろうか。「味付けは牛丼とは異なります」(吉野家)
大手外食チェーン関係者はいう。
「外食チェーンやコンビニエンスストアは、自社オリジナルの食品の新商品を出す際には、まず試験的に一部の店舗のみで販売し、売れ行きや店舗のオペレーション上の問題が発生しないかなどを確認・検証してから全店舗で販売するので、その一環だとみられます。吉野家がこのタイミングで『牛鍋丼』を発売した理由は、完全に推察となってしまいますが、期間限定の『牛すき丼』が想定以上に売れ行きが好調であったり、もしくは『牛すき丼』を食べたことがきっかけで『牛鍋丼』を思い出した人たちの間で、再販を求める声があがっていたのかもしれません。『牛すき丼』はアタマのたまねぎ以外に3種類の野菜が使用されており、牛肉も野菜も価格が高止まりしているため、なかなか安く提供することが難しい一方、『牛鍋丼』ならアタマを減らして白滝と豆腐を入れれば済むので、500円以下で提供することができる。消費者から見てお得感のある価格で提供できるというのも、チェーン側にとっては魅力でしょう」
とのことだとBusiness Journalは報じている。
編集者:いまトピ編集部