14回目『金曜ロードショー』1992年に興収47.6億円

「カッコイイとは、こういうことさ。」
コピーライター・糸井重里氏の考案したそんなキャッチコピーが謳われたのは、宮崎駿監督の劇場アニメ『紅の豚』(1992年)です。興収47.6億円を稼ぎ、それまでの劇場アニメの年間最高興収を記録した作品です。宮崎監督は前作『魔女の宅急便』(1989年)に続くヒット作となりました。
その後、宮崎監督は国民的アニメ作家と称されるようになっていきますが、メッセージ性が強く出るようになり、説教臭く感じる人もいるようです。『魔女の宅急便』や『紅の豚』のころの宮崎アニメが好き、という人は多いと思います。
5月9日(金)の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)は、14回目となる『紅の豚』が放映されます。飛行艇の全盛期だった時代を舞台に、ハンフリー・ボガート主演映画『カサブランカ』(1942年)を思わせる世界観、主人公を待ち続ける大人の美女と若さあふれる理系少女のダブルヒロイン、主題歌は学生運動世代の人たちの愛唱歌だった「さくらんぼの実る頃」……。宮崎監督が大好きなものばかりで構成された作品です。
アニメーションの楽しさを満喫させてくれる『紅の豚』ですが、その一方では宮崎監督の女性観の古臭さを指摘する声も挙がっています。
水上を華麗に飛び立つ飛行艇の美しさが、とりわけ印象に残る『紅の豚』です。飛行艇こそが、本作の主人公だと言ってもいいでしょう。飛行機の操縦席はまだ風防ガラスで覆われておらず、パイロットたちは風を肌で感じることができた時代の物語です。
スタジオジブリは東京都郊外の小金井市に新社屋を完成させ、新規採用の新人スタッフたちも加わり、活気に満ちていた時代です。『となりのトトロ』(1988年)の劇場興収こそ伸び悩んだものの、『魔女の宅急便』に高畑勲監督の『おもひでぽろぽろ』(1991年)も続けてヒットしました。ここらへんで、ひと息入れようかというタイミングで『紅の豚』の制作が始まったそうです。
もともと短編アニメとして企画されていた『紅の豚』を、宮崎監督は楽しみながら作ったことが作品の隅々から感じられます。30分の短編アニメのはずが、宮崎監督の創作意欲が膨らみに膨らみ、長編アニメになってしまったのです。
公開時でもすでに時代錯誤な設定でしたが、戦前を舞台にしたファンタジーアニメということで済まされていました。しかし、自立した大人の女性であるジーナが、ポルコから求婚されるのをずっと待ち続けていたことなども、宮崎監督の女性観の古臭さを感じさせずにはいられません。宮崎監督の限りなくプライベートフィルムに近い作品として接するのが、『紅の豚』との向き合い方のようです。
好調の波に乗ったスタジオジブリは、経営難に陥った親会社・徳間書店に吸収合併され、デジタル技術を導入した超大作『もののけ姫』(1997年)に着手し、新しいフェーズへと移行することになります。『紅の豚』はセルアニメの終焉を告げた作品だとも言えそうですとサイゾーオンラインは報じている。
編集者:いまトピ編集部