ローソン・ファミマが連続最高益「セブン一強から」「平均日販60万」

「コンビニの王者」が揺らいでいる。2025年3〜8月期の中間決算で、ローソンとファミリーマートが増収・最高益更新を記録する一方、セブン&アイ・ホールディングスは減収・営業減益に沈んだ。
そして直近の9月度既存店売上でも、ローソン+4.1%、ファミマ+3.3%と好調を維持、セブンは+0.5%にとどまった。物価高や人手不足、災害対策など逆風が続くなか、業界勢力図は確実に書き換わりつつある。戦略コンサルタントの高野輝氏に分析してもらった。
ローソンは2026年2月期第2四半期(3〜8月)で営業収益・営業利益・経常利益・純利益すべてが過去最高。国内コンビニ全店の平均日販は60万3000円(前年同期比+5.3%)と、初めて60万円台に到達。既存店売上高は+5.3%、客数+1.5%、客単価+3.7%。
9月度の月次も堅調で、既存店売上高+4.1%(客数100.6%/客単価103.5%)と2ケタに近い成長を維持。「ハピとくーポン」や「からあげクン」増量キャンペーンが好評で、からあげクンや米飯・調理パン・麺類など中食カテゴリーが軒並み好調だった。
竹増貞信社長は決算会見でこう語った。
「加盟店の尽力にテクノロジーと50周年施策がうまくかみ合った。加盟店利益を基軸に経営してきた成果が数字に表れた」
実際、加盟店オーナー1人当たりの利益は前年比10%超増。2019年度から6年連続で増益を続けている。AIを活用した需要予測による発注最適化、無印良品や厨房調理弁当など「指名買い」商品が伸び、PBのスイーツ群も販売を牽引した。
また、KDDIと三菱商事による共同経営体制のもと、通信データ×商流を一体化した分析・供給モデルを構築。「AI×MD×物流」の統合が、売上・利益ともに押し上げた格好だ。
ローソンは成長と並行して、防災インフラ化にも動き出している。千葉県富津市の富津湊店を皮切りに、
サイネージによる災害情報発信、
太陽光発電による停電時稼働、
EV社用車による支援物資輸送、
といった「災害支援コンビニ」構想を展開。
2030年までに太平洋沿岸を中心に100店舗設置を目指しており、“社会インフラ企業”としてのブランド転換を進めている。
ファミリーマート:辛味戦略とデジタル販促で堅調維持、9月も+3.3%
ファミマは中間期で増収・事業利益過去最高を記録。平均日販は59万5000円(+3.8%)。「ファミチキレッド」などの辛味訴求商品や、大谷翔平選手起用のおにぎりキャンペーンが若年層にヒットした。
ただし、中国事業再編益の反動で純利益は3割減。実質的には好業績といえる。9月度も既存店売上高+3.3%(客数98.6%/客単価104.8%)と高水準を維持。43カ月連続で前年超えを達成しており、安定的な右肩上がりが続く。
細見研介社長は決算発表でこう強調した。
「AIやデータを活用して省人化と品揃え最適化を進め、加盟店利益拡大につなげる。店舗は“商品を売る場”から“情報を発信する場”に進化させる」
全国約1万500店舗にデジタルサイネージを導入し、アプリ「ファミペイ」やECサイトと連動。来店・購買データを活用し、「店舗のメディア化」を推進している。中食でも、おにぎり専門店監修の「シンおむすび」や「ファミマのお芋堀り」キャンペーン商品がヒットし、売上を牽引。
リアルとデジタルを融合させた販促モデルが、ファミマの競争優位を生み出している。
セブン-イレブン:国内営業減益、海外もガソリン減で低迷続く
セブン&アイ・ホールディングスは中間期で減収・営業減益。海外ではガソリン販売減少が響き、米国事業が減速。国内も物価高で来店頻度が伸びず、営業減益・客数減少という結果に。
9月度も既存店売上高+0.5%(客数97.8%/客単価102.8%)と低調。降雨が多く客数を押し下げた一方、「秋をほおばれ!」キャンペーンなどで客単価は増加した。新商品「旨さ相盛おむすび」シリーズが好調で、米飯カテゴリーの回復は見られるものの、トータルでは他2社との差は広がっている。
ただし純利益は、前年同期のネットスーパー撤退損失の反動で2.3倍に増加。スティーブン・ヘイズ・デイカス社長は「できたてカウンター商品で客足回復を急ぐ」と述べ、惣菜・ホットスナック刷新を今後の柱に据える。
かつて不動だったセブンの牙城を、ローソンとファミマが同時に崩し始めた。両社の共通点は、
AI・データ駆動の店舗運営
加盟店利益を軸にした構造改革
顧客接点のデジタル化(アプリ・サイネージ)
である。
ローソンは「通信×商流」、ファミマは「販促×デジタル」、セブンは「品質×ブランド」で戦うが、スピード感・変革力・加盟店との信頼構築で、前者2社が明らかに先行している。
・AI発注の標準化
ローソンが先行する需要予測発注を、他社がどの速度で追随できるか。
・中食・惣菜の“できたて競争”
セブンが再び強みを取り戻すか、ローソンが厨房モデルで独自路線を確立するか。
・加盟店のP/L改善
人時生産性・廃棄率・販促配分の最適化で、FC全体の利益モデルを再設計できるか。
・防災・省エネ・ESG対応
ローソンの「災害支援店舗」構想は、業界全体に波及する可能性。
・メディア化・データ販促の収益化
ファミマのサイネージ・アプリ連携モデルが成果を上げれば、広告収益が新柱になる。
いま業界で最も“構造を変えている”のはローソン
ローソン:平均日販60万3000円、全利益過去最高。加盟店利益10%増、AI×PB×防災で「持続的成長モデル」確立。
ファミリーマート:事業利益過去最高。辛味戦略・ファミチキでブランド力を高めつつ、メディア化で新収益を開拓。
セブン‐イレブン:減収・営業減益、既存店0.5%増。高いブランドと品質を持ちながらも、変革スピードの遅れが課題。
いまや「規模」よりも「変化速度」が勝敗を分ける。ローソンとファミマは、データ・テクノロジー・現場をつなぐ“構造改革の先頭”に立った。セブンが次の一手を打てるかどうか──2026年、業界の主役交代が現実味を帯びてきた、とビジネスジャーナルが報じている。
編集者:いまトピ編集部