首都・東京23区侵入?「冗談ではない」

10月末に環境省は「今年度、全国でクマに襲撃されて死亡した人数は、過去最多の死亡者数だった23年の2倍、12人に上る」と発表した。
連日報じられるクマ被害は、まさに非常事態と言っても過言ではない。近年、北海道、東北、北陸地方を中心にして拡大し、その脅威は全国各地に広がりつつある。そして、冗談ではなく首都・東京23区にまで迫りつつあるというのだ─。
本来は山奥に生息する野生のクマが人間の生活圏に出没し、甚大な被害をもたらすようになったのには理由がある。動物生態学が専門の石川県立大学・大井徹教授が解説する。
「まず1つ目の要因は、1960年頃まで、いわゆる里山では薪、炭などの燃料、畑の緑肥の採取が行われていました。畑や田んぼにもなっているところもあった。しかし、木質燃料の代わりに石油燃料が使われるようになるなど、生活の変化により、里山は自然資源の供給場所ではなくなった。そのため木々が生長し、クマの格好の隠れ場所となって、木の実などのエサも十分に実るようになった。人里にも近いので、銃の使用も控えられて、クマにとっては安心して生活できる環境になったのです。人間の生活圏の周辺に住みつくことで、次第に人に慣れていったクマが増え、出没する状況が整えられていきました。2つ目の要因は、一時的なエサ不足。クマは冬眠する前にたくさんのエサを食べて、エネルギーを蓄えるのですが、今年は北海道、秋田、岩手などで、主食となるブナなどのドングリ類が大凶作となった。山の中にエサがない一方で人里にはカキ、リンゴなど、大きくておいしい実をつけている木や家畜のエサなどがあります。そうしたエサを求めてクマが大挙して出没しているのです。加えて耕作放棄の問題もある。高齢化や後継者不足が進み、畑が荒れ地となって、そこがクマの住処になったり、エサを供給する場所になったりしているのです」
東京都がインターネット上で公開している「東京都ツキノワグマ目撃等情報マップ〜TOKYOくまっぷ〜」によると、今年に入って青梅市や奥多摩町、日の出町など、西多摩地域において捕獲、目撃などが確認された情報は、すでに241件を超えている。はたして今後、東京23区内にまで野生のクマが侵入してくる事態となるのだろうか。
「例えばクマが生息する西多摩地区から多摩川沿いを移動すると、直線距離にして40キロ程度で世田谷区内に到達することができます。河川地帯には整備された緑地のほかに、草木が生い茂っている場所が残っていたり、クマのエサになりうるものが植えてあったり、隠れ場所になるようなヤブもあったりします。以前、クマに発信機をつけて、その生態を観察したことがあるのですが、約10キロを半日で移動したという調査結果もある。西多摩地区に生息するクマが人目につかないように移動することができたならば、1週間程度もあれば、東京23区に侵入することは、決して絵空事ではないのです」
と、アサ芸プラスが報じた。
編集者:いまトピ編集部

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