能登半島地震から4カ月を迎える石川県能登地方。今なお現地には倒壊したままのビルや家屋が残り、避難所生活を余儀なくされている人もいる。復旧はなぜ進まないのか、どういったハードルがあるのか。被災地出身の国会議員とともに『ABEMA Prime』で考えた。

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■進まぬ復旧…能登の現状

 能登の倒壊家屋は、まだ公費解体(申請に基づいて所有者に変わって自治体が解体撤去する制度)が進んでいない。解体想定数2万2000棟に対して、申請8528棟のうち、着手が34棟(緊急解体含め244棟)、完了は9棟(緊急解体含め88棟)にとどまっている(4月22日時点)。完了予測は2025年10月で、石川県は4月26日に解体を加速させるためのサポート窓口を開設した。

 被災地の石川3区を選挙地盤としている近藤和也衆議院議員(立憲民主党)は、「1カ月ほど前の時点でも、壊れかけた建物を避けながら通る道路があった。孤立集落もあり、危ないところから優先して直していった」と説明する。「視覚的にひどいところですら後回しにせざるを得ないほど大変だった。残酷な優先順位があった」。

 いまだ断水から復旧していないエリアも多い。4月26日14時時点で、珠洲市で約2320戸、輪島市で約1420戸、能登町で約210戸と、合計約3950戸で断水が続いている。

 近藤氏は「業者が金沢から通わないといけない状況で、現地で動くためには上下水道が使える必要がある。一方で、公費解体をしないと上下水道の復旧が進まない面もある」と説明。今後のめどについて、「上下水道の復旧が進み、解体業者は5月の途中から急増すると想定されている。能登地方に拠点を置いて、一気に工事を進められると思う」との見方を示した。

■「一部は政治が責任を持って片付けるべきだ」

 26日に能登を訪れた「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、倒壊したビルのオーナーから聞いた話として、「解体するにも、お金を借りている銀行の承認も得ないといけない。テナントの確認も必要で、ようやく書類を出せそうだと言っていた。“書類多すぎ問題”のようなものが山積みになっている」と紹介。

 この指摘を受けて近藤氏は、「印鑑や書類については、環境省がマニュアルを出して、相当緩和された」と語る。「輪島市では、実際にそこに住む一番権限のある人が『後から何を言われても、私が責任を持つ』と誓約書を出せばいい仕組みを取り入れた。この流れがどこまで進むか」。

 全員の同意を得ない進め方には訴訟リスクもつきまとうが、「市長や議員が訴えられるのは、極論仕方ない」との見解だ。「過去の災害で、役所や役場で最前線にいる職員が訴えられたことがあり、それは本当にかわいそうだ。行政として責任を負い、個人がリスクを負わなくなれば、誓約書方式は一気に進む」。熊本地震の液状化でも、地域の同意で復旧が行われた。「6割もしくは過半数の同意を得られれば、地域を一気に直すことは可能。輪島朝市のエリアはもう個人ではどうしようもなく、政治が責任を持って片づけるべきだ」。

 ハードルとなっているのは、申請手続きが煩雑で、家族の同意が必要なことや、所有者の現地立ち会いが必要であることなど。遠方への避難などで承認が進まない現状がある。

 近藤氏は、「津波や火災で地域全体がダメになれば、公費解体もやりやすい。今回は地震のため、罹災証明書が出ないことには解体が進まない。罹災証明、公費解体、上下水道の復旧がダブる時期を少しずつずらしていれば、1カ月ほど早まっていたかもしれない」とした。

■「今できる渋滞は命に関わらない」 みんなにできる“復旧”は

 石川県では、9年後の2032年度末をめどに段階的に復興する「石川県創造的復興プラン(仮称)」の骨子をまとめている。単なる復旧ではなく、創造的復興を目指す内容だ。また輪島市も、3年後までに生活・生業の再建と、新たなまちへの再生を目指している。

 近藤氏は「珠洲市では、井戸水を使って再開している飲食店もある。仮設住宅も順番にできている。仮設住宅に入居した直後は気持ちが盛り上がるが、半年、1年経つと『早く家に帰りたい』と疲れてしまうので、どんどん来てほしい」と呼びかける。

 これに対し、フリーアナウンサーの柴田阿弥は、「震災直後の『来ないで』のメッセージが強かった」と振り返る。「その後も被災地入りした人が『けしからん』と言われているのを見ると、解体作業が進んでいないなか、『迷惑になるのでは』と足を運べない人も多いのではないか」。

 近藤氏は「すごく大事な指摘だ」とし、「最初の1、2週間は、命に関わる渋滞が起きていたため、『プロ以外は来ないでほしい』と呼びかけた。しかし、今できる渋滞は命に関わらない。ゴールデンウィークなどに皆さんが来ることで、復旧が進んでいけばいい」と述べた。(『ABEMA Prime』より)