地震で全半壊となった家屋を、自治体が所有者に代わって解体・撤去する公費解体ですが、能登半島地震での復旧、復興を本格化させる上で重要な足がかりとなる一方、作業は思うように進んでいません。

石川県は、およそ2万2000棟の家屋で公費解体が想定されるとの見通しを示していて、来年10月までに作業を完了させたいとしています。一方で、解体したくてもなかなか手続きに踏み出せないという事情もあります。複雑な住宅事情など多くの要因が壁になっています。

輪島市の職員「時期が全然読めなくて。早くて(解体工事を終えられるまで)半年です」

1日から、公費解体の申請受付が始まった輪島市では、15日までに987件の申請がありましたが、緊急の解体を除き住宅の工事はまだ始まっていません。

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その要因のひとつが「手続きの煩雑さ」です。

住民「登記の証明書がいるんだって、だから今から法務省いかんなん。町野町やから時間がかかってどもならん。はよ潰してほしいけど私らばっかりじゃないもん」

家屋の解体には、所有者の同意や立ち会いが必要になりますが、相続が起きた後に相続登記が行われず、亡くなった人の名義のままとなっていたり、ひとつの建物に複数の所有者がいるというケースも多く、確認作業に時間がかかるといいます。

輪島市環境対策課・友延和義課長「相続が発生しているけど、それを知らずに申請しに来て、やり方が間違っていると伝える場合もある」


さらに、対応にあたる自治体職員のマンパワー不足も、手続きを円滑に進める上で大きな壁になっていて、県外からの応援の職員が頼りです。

輪島市環境対策課・友延和義課長「先が見えないというか、長期的にはまだまだ足りない状況。来年10月までに解体を終わるには2〜3か月前には見通しを持っていかないと。早く申請してもらえれば計画は間に合うのでは」

一方、簡単には公費解体に踏み切れない住民もいます。

住民の女性は「築90年かなぁ?全壊や」

輪島市中心部から東におよそ5キロ離れた惣領町に住む女性は、全壊と判定された自宅に住み続けながら、仮設住宅の入居を待っています。

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住民の女性「住む所が仮設住宅でもあたったら、それで(解体を)申し込むしかないと思うけど。私はそんな段階に行かんもん」

ゆくゆくは自宅を解体して新しく建て直したいと話しますが、次に住む場所が決まらない限りは公費解体の申請はできません。

住民の女性「(この場所には)住み続けたい」

県によりますと、県内での公費解体の申請数は9日時点で5477棟に上っていますが、実際に解体が完了したのは能登町のわずか3棟です。

手つかずの住宅が多く残る被災地 公費解体が完了したのは能登町の3棟だけ


1日でも早い生活再建へ欠かすことのできない家屋の解体。作業を円滑に進めるにあたってのハードルはまだまだ多く、高いと言わざるをえません。