本塁打のリーグ記録を樹立

 4月も中旬を過ぎ、高校野球をはじめ、大学野球や社会人野球、独立リーグでプロ野球を目指す選手たちの戦いが全国各地で本格的に行われている。今年のドラフト候補では、明治大のショート宗山塁や関西大のエース金丸夢斗、青山学院大の外野手・西川史礁、愛知工業大の右腕・中村優斗が大きな注目を集めている。彼らは、3月に行われた侍ジャパンの強化試合に召集されて、欧州代表を相手に結果を残した(※宗山は負傷で練習のみの参加)。しかし、プロ注目の大学生選手は、彼ら以外にも多く存在している。【西尾典文/野球ライター】

 その中で真っ先に名前を挙げたいのが、大阪商業大の外野手、渡部聖弥。広陵時代は宗山とチームメイトで、当時はそこまで目立った選手ではなかった。大学進学後に大きく成長して、1年春からレギュラーを獲得すると、2年秋にはシーズン5本塁打のリーグ記録を樹立した。

 昨年、大学日本代表に選ばれ、日米大学野球でホームランを放っている。よく鍛えられたたくましい体格で、長打力と確実性を兼ね備えたバッティングが持ち味だ。右方向にホームランを打つことができるほか、脚力と肩の強さも魅力的である。

 大学選手権と明治神宮大会に計5度出場して、11試合で42打数20安打1本塁打、打率.476という圧倒的な数字を残している。昨年の大学選手権では、東京ドームのライトスタンド中段に飛び込むホームランを放ち、スタンドのスカウト陣を驚かせた。

 侍ジャパンの井端弘和監督は「渡部をトップチームに招集するか、ギリギリまで悩んでいた」と話しており、渡部が有力なドラフト1位候補であることは間違いないだろう。

法政大の「右腕」、青学の「サード」

 このほか、法政大の右腕、篠木健太郎と青山学院大のサード、佐々木泰にもスカウト陣から熱い視線が注がれている。

 篠木は、木更津総合時代に下級生の時から活躍していた右腕で、3年夏の千葉県代替大会でチームを優勝に導いた。法政大に進むと、2年春から主戦投手に。その年の夏、大学日本代表に選出された。3年春のリーグ戦で防御率0.68という好成績を残して、最優秀防御率のタイトルを獲得している。

 昨秋のリーグ戦で右肩の張りを訴えて調子を落としたため、昨年12月の大学日本代表候補合宿では本調子に程遠い投球だった。今春は復調し、オープン戦で順調に登板を重ねている。コンスタントに150キロを超えるスピードと鋭く変化するスライダーとフォークは一級品。最終学年で、本来の投球ができれば1位指名が見えてきそうだ。

 佐々木は、県岐阜商時代から評判のスラッガー。3年夏に出場した甲子園交流試合では大会唯一となるホームランを放っている。青山学院大でも、入学直後にサードのレギュラーを掴むと、1年春にいずれもリーグ2位となる打率.347、4本塁打を記録。ベストナインを受賞した。それ以降は、相手の厳しいマークにあって、2年秋と3年秋は打率1割台と苦しんだが、ここまで現役最多となるリーグ戦通算11本塁打を放つなど、長打力は大きな魅力になっている。

今年の東都大学野球で一番のピッチャー

 投手をみると、昨年12月の大学日本代表候補合宿でアピールに成功した、環太平洋大の徳山一翔と日本体育大の寺西成騎が、4月14日終了時点で登板がなく、調整の遅れが気になるところ。

 その一方で、国学院大の坂口翔颯が評価を上げている。ここまで味方の援護がなく連敗スタートとなったものの、開幕戦では強打の青山学院大を相手に被安打4、1失点で完投。視察したスカウトは、坂口を高く評価するコメントを口にしていた。

「立ち上がりは少し慎重になり過ぎるところがありましたが、2回以降は全く危なげなかったです。昨年と比べて、全てのボールが良くなっていますね。試合の終盤でも球威とコントロールが安定していました。年々成長が感じられますし、今年の東都大学野球のなかで、一番のピッチャーではないでしょうか」(セ・リーグ球団スカウト)

 ストレートは140キロ台後半と最近の大学生にしては驚くような速さがあるわけではないとはいえ、多彩な変化球を操り、コントロールも安定している。比較的早く使える投手が欲しい球団は、高く評価する可能性が高いだろう。

父は「内野の名手」

 最後に外野手。今年は、西川と渡部以外にも、富士大の麦谷祐介や立命館大の竹内翔汰、大阪経済大の柴崎聖人、金沢学院大の井上幹大といった実力がある選手が少なくない。

 なかでも、立正大の飯山志夢が一気に評価を上げている。父は日本ハムで内野の名手として活躍した飯山裕志氏(現・日本ハムスカウト)。飯山は昨春のリーグ戦(東都二部)で首位打者を獲得し、大学日本代表候補に選出されている。

 今春のリーグ戦では、開幕週で東洋大を相手に3試合で5安打3盗塁をマーク。筆者は開幕戦のプレーを現地で確認したが、バッティングだけでなく、センターの守備と走塁でもたびたび好プレーを披露していた。スピードのあるリードオフマンタイプとして、今後もスカウト陣の注目を集めることは間違いない。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部