これがメルセデスAMG EQE53 4マチック・プラス SUVに試乗したモータージャーナリストの本音だ!!「これが、これからの電気自動車のベンチマーク!」by 藤原よしお
「内燃機からのスムーズなBEV移行がしたいという人に最適」藤原よしお
正直に言って驚いた。BEVというと、ロケットのような加速力があってメチャクチャ速いんだけど、クルマ全体の妙な重さは払拭できなくて、ハンドリングもどこか人工的でダイレクト感に乏しく自動車というより家電的……という先入観があったし、実際に乗ってもそういうクルマが多かった。でもEQE SUVはその真逆。
確かにアクセレレーターを思いっきり踏めば速いのだけれど、すべての動き、感触がとってもナチュラル。車重は2.7トンもあるけど、EQS SUVのような自らの重さを制御しきれないチグハグ感もなく、ハンドリングも乗り心地もスッキリと爽やか。
特にゆっくり、ゆったりクルージングしてみると、クルマ全体の手触りの良さ、耳馴染みの良さ、良いモノ感がじわっと沁みてくる。さすが内燃機自動車の祖として1世紀以上積み上げてきた「クルマ作り」の勘所は、電気になっても健在。
BEV食わず嫌い、もしくは内燃機からのスムーズなBEV移行がしたいという人に最適。既存のBEVから乗り換えるとよりその出来の良さ、上質さが際立つはず。これからのBEVのベンチマーク。
「どんな道でも退屈とは無縁」生方聡
輸入車には、その名前を聞いただけで心躍るモデルがある。たとえば、AMG。いわずと知れた、メルセデスのハイパフォーマンスカー・ブランドだ。よく耳にするのは、いくつかのモデルでは、そのパワーの源であるエンジンをひとりのマイスターが責任をもって組みあげるという話。それだけに、AMGのエンジン・パワーを解き放った瞬間の興奮は格別である。
そんなストーリーを持つAMGが、EVの時代でも変わらずエキサイティングなのがすごいところ。標準グレードのEQEやEQE SUVは、走り、乗り心地、室内の広さのどれをとってもハイレベルな仕上がりを見せ、その内容を考えると従来のエンジン車よりもコストパフォーマンスの高い出来。
正直なところ不満はないが、そのAMG版であるEQE 53 4マチック+ SUVは、ふだんは標準グレードの良さを見せながら、ここぞという場面でアクセレレーターを踏み込むと、圧倒的な加速で心ときめき、AMGであることを思い知らされる。ボディの重さを感じさせない軽快なハンドリングゆえ意のままにワインディング・ロードを操れるから、どんな道でも退屈とは無縁である。
「思わず“いいクルマだなぁ”と口元が弛む」嶋田智之
メルセデスはどこまで行ってもメルセデス、BEVになってもメルセデス。そこだよな、とあらためて感服させられた。その一貫性というか、クルマ作りの中心軸にある哲学の強大な存在感。それがすべてを支えてるのであり、そこにユーザーは惹かれるのだな、と。
メルセデスの“らしさ”とは、いかなるときもじんわり“いいクルマだな”と感じさせて、乗り手をいい意味で“いい気”にさせること。僕はそう感じてる。原動機が何であっても、そこに相違はいっさいない。
このクルマもシステム最大で750Nmもあるのに、それを怖いほどの加速にはやればできるくせに結びつけず、すさまじく滑らかでキメの細かい洗練された走りとして表現している。いつしか原動機が何かなど頭から消え去って、低速域ではふんわりと優しく高速域では重厚にして安定感抜群の快適な乗り心地、それにいかなるときも思いどおりに動いてくれる走りの忠実さに、思わず“いいクルマだなぁ”と口元が弛んでる。
こういうクルマに日々乗ると人間は間違いなく堕落する。僕も内心、このクルマで堕落したいと感じてる。
写真=小林俊樹(メイン)/郡 大二郎(サブとリア)
(ENGINE2024年4月号)