名古屋鉄道(名古屋市)が3月に公表した中期経営計画で、名鉄岐阜駅(岐阜市)周辺の再開発計画の1期目事業エリアに駅隣接の商業施設「イクト」が含まれていることが21日、分かった。関係者によると、来年春ごろに施設を解体する予定で、すでに入居するテナントには契約を更新しない意向を伝えている。解体後の跡地にはビルの建設が見込まれ、駅周辺の名鉄グループの駐車場や建物を含めた再開発の動きが本格的に進む。

 名鉄の計画などによると、1期の事業エリアは、イクトの入る商業施設と岐阜乗合自動車(岐阜バス、岐阜市)のバスターミナルを含む「神田町街区」。跡地の活用方針は名鉄が2024年度中に公表する見通し。

 イクトは09年、名鉄と県、岐阜市が進める鉄道高架化事業の計画を踏まえ、15年間の暫定的な施設として開業。1階にスーパー、2階に飲食店や服飾店などが入居している。施設の運営会社はテナントに対し、次回の契約を更新しない方針を通知。今秋をめどにテナントが退去する予定で、閉鎖後に解体の準備を進める。

 名鉄の計画では、駅周辺のグループ所有地に商業施設や住宅などを整備する複合的な再開発を検討している。2期以降は、岐阜駅北側の岐阜ロフトのビル周辺のエリア「長住町街区」や、岐阜中央郵便局南側の名鉄協商駐車場があるエリア「清住町街区」を対象に行う。再開発を見据え、名鉄のグループ会社は1期の対象エリアのすぐ南で、来年5月下旬に完成予定の15階建て分譲マンションを建設している。

 名鉄は新型コロナウイルス禍で輸送需要が大きく落ち込んだが、新型コロナの5類移行後は円安による好調なインバウンドを追い風に需要が回復。コロナ禍で延期していた名古屋駅周辺の再開発の方向性を24年度中に判断し、公表する方針を示している。