Image: Kyle Barr - Gizmodo US

最近落ち着き気味のMacBook Proに、Dell XPSが殴り込み?

いろんなノートPC比較レビューがありますが、これほど評価が割れる対決もなかなかないんじゃないでしょうか。この記事ではDell(デル)の新しいXPS 14と、Apple(アップル)のM3 MacBook Proを比較してみます。

Appleは鉄板のシンプルなデザインとM3チップの性能が決め手であるのに対し、Dellの最新XPS 14はちょっと変わったデザイン&オプションでディスクリートGPUも選べるのがポイントです。安定のAppleに対し、Dellの新機軸がどれくらい食い込めるか、といった感じです。

変なガジェットはいつでも待望してるんですが、Dellの新XPS 14のデザインは、2022年のXPS 13 Plusの時点でも賛否両論でした。今年の14インチ/16インチのXPSも同様に、見えないトラックパッドにフラットなキーボード、その向こうにはタッチバーが燦然と輝き、Dellはこの路線で行くってことがさらに明確になりました。

逆にAppleはAppleで、安全運転すぎるかもしれません。M3 MacBook ProシリーズはM2 MacBook Proシリーズと同年内にリリースされ、実質ほとんど同一モデルです。今やMacBook AirにもM3版はありますが、見た目も感触も、やっぱりM2版とほぼ同じです。構成によっては、M3 MacBook Airはベンチマーク結果もM3 MacBook Proとほとんど同じになります。

細かい部分を比べると、M3 MacBook Proはポートが豊富で、フルSDカードスロットとHDMIポート、Thunderbolt 4対応USB-Cポート2つを備えてます。XPS 14にはUSB-Cが3つ、microSDカードスロット、ヘッドホンジャックです。XPSにはHDMIを入れるプラスチックのドングルが付いてきますが、厚さはMacBook Proとほぼ同じです。

そんなわけでデザイン的にはXPS 14の方がMacBook Proより興味深いんですが、じゃあ全体としてどうなんでしょう? 以下、見ていきましょう。

デザインは斬新じゃなくていい…のでは

おなじみのMacBook Pro(左)に、トラックパッドレスなXPS 14(右)
Image: Kyle Barr - Gizmodo US

DellかAppleかで迷ってる人には、新しいXPSのデザインは判断の分かれ目になるかもしれません。XPS 14は以前から大胆にリデザインされ、いろんな意味で賛否両論です。一方MacBook Proはおなじみのデザインで、重量だけは少し軽くなってるものの、Magic Keyboardやトラックパッドは今まで通りです。

M3 MacBook Pro 14インチは、M2バージョンと外見的には同じです。以前のゆるやかにカーブした筐体から角張ったデザインへの変更は、それによって他のノートPCと似てきてしまったとはいえ、もう広く受け入れられてます。新XPS 14のデザインはその真逆で、MacBook Airよりさらにドラマティックなスロープを描き、全体にシュっとした外観です。

フタを開けると、話はまた変わってきます。Appleは以前からのキーボードとトラックパッドを流用してますが、XPS 14は劇的にフラットで、巨大なガラスパネルの下にトラックパッドを隠し、キーとキーの間にはスペースがありません。またファンクションキーの列が、MacBook Pro 13インチのタッチバーみたいなタッチ式になってます。Macがタッチバーやめた後、あえて採用っていうのがチャレンジャーです。

MacBook ProもXPS14も筐体の質感はしっかりしてますが、MacBook Proの方が3.4ポンド(1.55kg)と、XPSの3.7ポンド(1.69kg)より若干軽いです。MacBook Proのタイピング感は今まで通りキーのクリック感がありますが、XPS 14はキートラベルが若干短く、打鍵感は少し柔らかく感じます。

キー間のスペースがないことには慣れるかもしれませんが、キーが浅いので、タイプ圧が低くサラサラっと押す人の場合は指が滑っちゃうかもしれません。この点でも、MacBook ProのMagic Keyboardが安定してるのに対し、XPSは良くも悪くも斬新です。

ここで「悪くも」の方に多分入るのが、タッチ式のファンクションキーです。キーの反応は良くて、ここで音量や画面輝度を変えられるのはまあいいとして、ESCキーまでタッチなのは正直どうかと思います。

トラックパッドに関しては、MacBook Proも滑らかなスケートリンクみたいですが、XPS 14はもっとスルッスルです。XPS 14のトラックパッドはWindowsキーから左矢印ボタンまで広がり、通常よりかなり大きめですが、慣れれば大丈夫です。

性能はどっちもどっち

Image: Kyle Barr - Gizmodo US

最新M3チップはたしかにすごい性能で、他のチップメーカーのCPUと良い勝負をしてます。Intel Core Ultra 7との比較では、GeekbenchでもCinebenchでもM3が若干上回ってるんですが、レンダリング系タスクでもない限りそんなに違いは出ません。また、そういうタスクが多い人は、どっちにしろ14インチじゃなく16インチバージョンを選んだ方がいいはずです。

では、グラフィック系はどうでしょうか? XPS 14はディスクリートGPUを選べるので、ゲーミングとかには向いてるはずです。ベンチマークスコアにもそれは現れてます。

ラップトップグレードのRTX 4050と32GBのRAM搭載のXPS 14を、3D Mark Wild Lifeテストで試した結果、ベースのM3 MacBook Pro(メモリは16GB)の2倍以上のスコアを叩き出しました。構成をきっちり合わせないと完全な比較はできないし、M3 MacBook Proはライトなゲーミングに向いてないわけでもないんですが、XPS 14の方がより適してはいます。

ただ、Blenderのベンチマークであるシーンをレンダリングしたときは、MacBook Proの方がXPS 14より良い結果でした。MacBook Proはしっかりチューニングされているので、ベースの8コアとか10コアのGPUから受ける印象以上に効率良く仕事ができるんでしょうね。

この辺の性能差はすごく細かいことなんで、影響受ける人はそんなに多くありません。それより、ちょっとくらいゲームもしたい人にとっては、XPS 14の方がクロスプラットフォームのタイトルに適してるし、そもそもWindowsマシンの方がMacよりゲーム向きなのは議論の余地なしです。

それ以外の一般的な文書作成といったタスクに関しては、MacBook ProでもXPS 14でも、どっちでも大丈夫です。

バッテリーではMacに敵なし

この点は異論を待たないとこで、M3 MacBook Proは、XPS 14よりはるかにバッテリーが持ちます。XPS 14はベーシックなタスクで7時間くらい持つ程度ですが、MacBook ProはAppleいわく最低18時間使えます。なので、XPS 14が仕事時間1日分持つかどうかなのに対し、MacBook Proは仕事した後に夜ソファの上でも使えて、さらに翌朝も残ってる、そんな感じです。

有機EL vs. mini-LEDはお好みで

mini-LEDのMacBook Pro(左)と、有機ELのXPS 14
Image: Kyle Barr - Gizmodo US

MacBook Proの画面はLiquid Retina XDRディスプレイ、つまりApple流のmini-LEDです。明るくてきれいですが、ノッチはそろそろなくなってもいいんじゃないかと思います。またHDR輝度は1,600ニト、SDR輝度が1,000ニトと非常に明るく、有機ELの深い黒にはかなわないですが、色が強調されてカラフルでもあります。

XPS 14は14.5インチの有機ELタッチスクリーンか、タッチなしのFHD+ディスプレイかが選べます。ピーク輝度は400ニトなのですごく明るいってものでもないですが、色のコントラストや黒の深みもあり、輝度はそんなに気にしないで大丈夫です。

画面をどう感じるかは好みによります。AppleのXDRディスプレイは今まで使われてきた実績もあり、明るいし、可変リフレッシュレートで最大120Hzになります。XPS 14はDolby Vision対応で、HDRがさらに進化してます。または有機ELにこだわるなら、XPS 14一択です。あとXPS 14はMacBook Proより若干ベゼルが細く、ノッチもありません。が、全体的にはどっちの画面も問題ありません。

音に関しては、XPS 14もかなり大きな音が出せますが、売り文句にあるようなサラウンドサウンドかどうかは微妙です。一方MacBook Proの音質は、Appleのマシンの常としてすごく良いです。じっくり聴き比べると、XPS 14の音はMacBook Proより若干安っぽく感じてしまいますが、聞き流す程度ならそんなにわかりません。

お値段の世知辛さは似たりよったり

Image: Kyle Barr - Gizmodo US

XPS 14はベースモデルが1,449ドル(日本価格27万5980円)、MacBook Proは1,599ドル(日本価格24万8800円)です。ただ、これはベースモデルの価格なので、実際はなんだかんだでもっとかかりがちです。Appleの方がオプションで高くなると思われがちですが、DellもDellも似たような戦術なんです。

例えばベースのM3 MacBook ProにはRAMが8GBしか載ってなくて、先々まで使えるか不安になります。じゃあ16GBにしようとなると、プラス3万円になります。M3が最新といっても、さらにM3 Proがあるんだからそっちにしようとすると、プラス8万円(メモリも増えますが)。さらにSSDの容量が512GBなのも心もとないから1TBにすると、お会計合計39万8800円になります。

でも、XPS 14も同じです。ベースモデルのメモリが16GBなのは良心的ですが、ディスプレイを有機ELにするとプラス約2万円、GPUをNvidia RTX 4050にするとプラス7万4000円、ストレージを1TBにするとプラス1万円…などなど、価格がどんどん上がっていきます。強いて言えばXPS 14の方がストレージのオプションが安めです。でも、GPU別立てにしないとグラフィックス性能は(相対的に)低く、ベースモデル同士の比較だとM3 MacBook Proよりベンチマークは低スコアになってしまいます。

というわけで、AppleでもDellでも、長く使おうと思うとつい高い方を選ぶことになりがちです。

MacBook Proの盤石ぶりがすごい

Image: Kyle Barr - Gizmodo US

MacBook Proはやっぱり、本当によくできてます。一方XPS 14にはムラがあり、好き嫌いが分かれるかもしれません。XPSを好きになるには、そのデザインをまるごと受け入れる覚悟が試される感じですが、MacBook Proにはそういう圧が(良くも悪くも)ありません。

でも、どっちも高い買い物になるので、買うとしたら自分が重視する使い方を考える必要があります。ゲーム用ならXPS 14と同じ価格帯でもっと良いものがたくさんあるし、「RTX 4050を載せられるから」はノートPCを買う動機としては不純です。XPS 14の有機ELディスプレイはAppleのディスプレイと良い勝負になりますが、その分値段が上がります。値段が上がるって意味では、Appleの方が多分厳しいですが。

そんなわけで、おなじみのMacBook Proと新機軸のXPS 14を比べてみたものの、XPS 14はMacユーザーの心を動かすほどじゃなさそうです。MacBook Proの性能に比肩するWindowsマシンが欲しい人でも、XPS 14のラディカルなデザインには引いてしまうかもしれません。迷ってる人は結局、しっくりくるかどうかで選ぶのがベスト、となりそうです。

Apple 2023 MacBook Pro 8 コア CPU、10 コア GPU の M3 チップ搭載ノートパソコ ン:14.2 インチ Liquid Retina XDR ディスプレイ、8GB ユニファイドメモリ、 512GBの SSD ストレージ、iPhone や iPad との連係機能 - シルバー 238,747円 Amazonで見るPR !function(t,e){if(!t.getElementById(e)){var n=t.createElement("script");n.id=e,n.src="https://araklet.mediagene.co.jp/resource/araklet.js",t.head.appendChild(n)}}(document,"loadAraklet") デルが「AIボタン」を搭載したノートPCを発表 去年のCESで発表されたDellの「XPS Plus 13」、覚えていますか?BE:FIRSTのメンバーも推していたやつです。今回、CESを目前にしてDell(デル)から最新モデルが発表されました。「XPS 13」、さらに「XPS 14」と「XPS 16」という2つの新しいサイズも登場。すべて「AI PC」となります。NPU搭載の「Core Ultra プロセッサー」新XPSシリーズの最大の特徴 https://www.gizmodo.jp/2024/01/dell-xps-ces2024.html