映画監督の濱口竜介氏が26日、東京・Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下で映画「悪は存在しない」の初日舞台あいさつに登壇した。

 米アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」(2021年公開)以来、3年ぶりの長編映画で、ベネチア国際映画祭の銀獅子賞(審査員グランプリ)受賞作。長野県の自然豊かな町を舞台に、グランピング場建設計画を巡る騒動を描く。当初、運転手として撮影に参加していた大美賀均(おおみか・ひとし)を主演に起用し、先の展開が読めない謎めいた作品に仕上げた。

 海外ではすでに公開され、濱口監督は先日、仏パリでの上映に立ち会ったという。主演に抜てきした大美賀について「やっぱり、この人は図太い。見る目があったと思います」と語り、自画自賛。大美賀は電話で監督からオファーを受けたことを振り返り「監督から『驚かないで、聞いてください』と言われて、何かやらかしたかと。当然、びっくりしたんですけど、こんな貴重な機会はないと思って、お受けしました」と語った。

 小坂竜士も本業は俳優だが、「ドライブ・マイ・カー」ではトラックの運転手として撮影に参加していた。渋谷采郁は監督の出世作「ハッピーアワー」からの付き合いで、子役の西川玲はオーディションで選ばれた。ほぼ無名の俳優を起用して世界的に評価される作品を生み出した濱口監督は「この映画を支えているのはスクリーンに映っている人たち。本当にすごい。一人一人が存在として輝いている印象を持っています。それに感動しています。この方々の仕事を見てもらいたい」と呼びかけた。