Web3時代のデータは集中管理すべきか、分散管理すべきか

――海外でWeb3の勢いが加速する今、日本企業にはどのような取り組みが求められるのでしょうか。

谷脇 今の日本に必要なことは、分散型のブロックチェーン技術をさまざまなビジネスモデルに組み込む挑戦を続け、「ブロックチェーン技術を使うとこんなことができる」という事例を積み重ねていくことです。その際には、「集中か、分散か」という二項対立でアイデアを考えないことが重要だと思います。

 インターネットの歴史を振り返ると、これまでも「集中」「分散」という2つのトレンドを行ったり来たりしているからです。Web2.0とWeb3は相対立するというより、むしろ「集中と分散のモデルをいかにしてベストミックスしていくか」こそが重要な論点です。その答えがまだ出ないからこそ、今後十分に議論すべきだと思います。

――Web3が人々の働き方や組織の経営に影響を与える可能性はありますか。

谷脇 Web3を構成する技術は今までにない革新的なものです。だからこそ今後、あらゆる分野への活用が模索されています。その一つが「DAO(分散型自律組織)」と呼ばれる新たな組織の形です。DAOは、ブロックチェーンを基盤にした中央集権的な管理を必要としない組織のことで、国境を越えて自律的に動く組織形態として大きな可能性を秘めています。

 その一方、分散型であるが故に「責任の所在」が不明確になりやすく、「運用上のガバナンスが適切に機能するか」「仕組みの曖昧さを解消できるか」という不安も残されています。先行している技術をどのように社会に実装していくか、公平性や透明性を確保しつつ説明責任も果たせるモデルとしてどのように確立させるか、今後十分に検討する必要があるでしょう。

 大切な視点は、「リスクがあるから活用を控えよう」とするのではなく「活用を前提として、どんなルールをつくればうまく使えるか」を考えることです。リスクを恐れていては、イノベーションを生み出すことはできません。革新的なイノベーションを生み出すためにも、トライ&エラーを繰り返しながら試行錯誤して進める姿勢が必要だと思います。