2024年のF1第3戦オーストラリアGPでフェラーリのカルロス・サインツJr.が優勝したのを見て、現メルセデスのルイス・ハミルトンは羨ましく思っているわけではないはずだと、メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは考えている。

 2024年シーズンのF1は、開幕2戦こそレッドブルが圧倒的な強さを見せていずれも1-2フィニッシュを果たしたが、第3戦オーストラリアGPではフェラーリのサインツJr.が優勝。レッドブルとの差を詰めつつあるように見える。

 一方でメルセデスは今季も苦戦。しかもオーストラリアGPでは、ハミルトンがパワーユニットのトラブルによりリタイア、チームメイトのジョージ・ラッセルは、レース終盤にクラッシュし、チームとしては無得点となった。

 ハミルトンは今季限りでメルセデスを離れ、来季からフェラーリに加入して、シャルル・ルクレールとコンビを組むことが既に決定している。メルセデスのチーム代表であるウルフはハミルトンについて、将来の所属チームがうまくいっているのを、羨ましく思っているわけではないはずだと考えているようだ。

「ドライバーたちは、このセットアップ全体において、非常に優れていると思う。ルイスは、考えられる最高のことをやっている」

 そうウルフ代表は語った。

「彼は明らかに、そういう状況にある。しかしその一方では、我々がそれを理解できていないのを見て、とてもイライラしている。しかし壁の向こう側(つまりフェラーリ)では、明らかにとても良いことが起きている。しかしそれは、現時点での彼の優先事項ではない」

「ジョージはファイターで、粘り強く戦っている。それが自分の居場所だと分かっているんだ。だから、我々は現在の問題を解決しなければいけない」

 ウルフ代表はさらに次のように続けた。

「私が自分自身のことを見る必要があるのと同じように、皆さんも常にそういう視点で我々のことを見る必要がある。それは何だ? なぜそこに辿り着けないのだろうか? ということについてね」

「我々も人間だ。データが意思決定を行なうのではなく、人間が意思決定を行なう。だから我々が立ち止まることはない。ここに留まるつもりはないよ。でも逆に、他に何をしなければいけないのか、どうやってプッシュできるのかを考えている」

 現在の苦境を考慮し、チーム内でどんなコミュニケーションを取る必要があるのか、それに注目しているとウルフ代表は明かした。

「私はオーストリア人だ。オーストリア人は、自分の心を大切にし、物事を非常に直感的に見る傾向にある」

 そうウルフ代表は言う。

「オーストリア人が『ちくしょう! なんてことだ』と言うような時、イギリス人なら『それは興味深いねぇ』と言うだろう」

「チーム内にこれ以上のプレッシャーを与えないように、コミュニケーションの方法を変える必要があった。その軋轢が、チームを壊してしまうことになるからね」

「努力が足りないから、競争力がないわけではない。だからむしろ、助け合い、励まし合って、そして『興深いね』と言えるようにしたいね」