4月14日、岡山国際サーキットで2024年スーパーGT開幕戦の決勝レースが行なわれた。優勝を飾ったのはGT500クラスが36号車au TOM'S GR Supra(坪井翔/山下健太)、GT300クラスは2号車muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)だった。

 3月上旬のスーパーフォーミュラ開幕戦を皮切りにスタートした2024年の日本国内モータースポーツシーン。スーパーGTは同月に公式テストを実施し、フォーミュラE、F1といった世界選手権レースを挟んでついに開幕の時を迎えた。舞台は開幕戦恒例の岡山だ。

 今季のスーパーGTは新車両の導入やレギュレーションの変更など、いくつかの変革があった。その中で最も大きな変更が予選方式であり、従来のノックアウト方式から、Q1、Q2のタイムを合算して順位を決する形になった。また、予選Q1、Q2、決勝スタートスティントでは同じタイヤを使わなければならない。

 その新予選でポールポジションを獲得したのは、GT500クラスが36号車au TOM'S、GT300クラスが65号車LEON PYRAMID AMG。決勝レースは春を通り越して夏のような陽気となり、気温26℃、路面温度39℃というコンディションの下で13時30分にスタートした。

■GT500クラス

 GT500の予選を制したのは、Q2で坪井翔が驚異的なアタックを見せた36号車au TOM'S。トップ5のうち4台がトヨタ・スープラ勢となり、39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra(2番手)、38号車KeePer CERUMO GR Supra(4番手)、14号車ENEOS X PRIME GR Supra(5番手)が上位に食い込んだ。

 その間に割って入り3番手となったのは、これがデビューレースとなるホンダのシビック・タイプR-GT勢で、100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTがつけた。日産Zの最上位は6番手の23号車MOTUL AUTECH Zだった。なお、8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTはQ1のトラックリミット違反により107%ルールをクリアできず、規則によりピットスタートとなった。

 スタートでは上位陣のオーダーに変化はなかったものの、1周目から接触が起きる波乱の展開。リボルバーコーナーで大嶋和也が駆る14号車ENEOSが、12号車MARELLI IMPUL Zと絡んでスピンし、そこに避けきれなかった17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTの太田格之進が追突してしまった。これで17号車Astemoがストップしてセーフティカー出動。14号車ENEOSはリヤを中心にダメージが大きく、マシンをガレージに入れた。12号車MARELLIもフロントにダメージが見受けられたが、ピットで作業を行ないコースに復帰。しかし接触の責任を問われドライブスルーペナルティを受けてしまった。

 レースは8周目に再開。トップの36号車au TOM'S坪井は後続にすぐさま3秒のギャップを築き、レースをリードした。2番手以下では39号車DENSO関口雄飛、100号車STANLEY牧野任祐、38号車CERUMO大湯都史樹が接近戦を展開。18周目には38号車大湯が100号車牧野を交わし、表彰台圏内の3番手に浮上した。

 今回は82周で争われるが、ピットが動いたのは29周目。3番手の38号車CERUMOと4番手の100号車STANLEYが同時にピットインしたが、ここで順位が逆転し100号車が前に出た。それに反応するように2番手39号車DENSO、36号車au TOM'Sも立て続けにピットインしたが、ライバルに対してポジションを奪われることはなかった。

 レースは折り返しを過ぎた段階で、37号車Deloitte TOM'S GR Supraだけがステイアウトを続けて見た目上のトップに。2番手には事実上の首位である36号車au TOM'Sがつけ、以下39号車DENSO、100号車STANLEY、38号車CERUMO、3号車NDDP NISMOというオーダーとなった。

 37号車Deloitte TOM'Sは53周を走ってピットへ。笹原右京からジュリアーノ・アレジに交代して7番手でコースに復帰した。これで36号車au TOM'Sが名実共にトップとなった。

 その後36号車au TOM'Sはセーフティリードを築いて首位を走行する一方で、39号車DENSOと100号車STANLEYの2番手争いは白熱。2台が1秒前後のギャップでファイナルラップまで争った。

 そんな2番手争いを尻目に、36号車au TOM'Sは完璧なレース運びを見せてトップチェッカー。連覇に向けて開幕戦ポールトゥウインというこれ以上ない結果で23ポイントを稼いだ。2位は39号車DENSOで、3位は100号車STANLEYだった。4位に38号車CERUMOが続き、5位の23号車NISMOが日産勢最上位となった。 

■GT300クラス

 GT300クラスは65号車LEON、2号車mutaのブリヂストンユーザーがフロントロウに並び、3番手にはダンロップタイヤを履く61号車SUBARU BRZ R&D SPORTがつけた。なお自社製作のZで参戦するGAINERは車両製作が間に合わず、開幕戦の走行を見送った。

 レース1周目には、GT500クラスだけでなくGT300クラスでもコースオフがあった。アトウッドカーブで22号車アールキューズ AMG GT3と48号車脱毛ケーズフロンティアGO&FUN猫猫GT-Rの接触があり、22号車がグラベルに捕まってしまったのだ。ただ22号車アールキューズは後にコース復帰を果たした。

 レースは8周目に再開。トップの65号車LEONと2号車mutaが接近した争いを繰り広げる中、3番手の61号車SUBARUはややギャップを広げられるような格好に。その61号車を抜いた4号車グッドスマイル 初音ミク AMGが表彰台圏内3番手に浮上した。

 2号車mutaは33周を走ってピットイン。予選後の段階でタイヤ無交換作戦の可能性も示唆していたが、実際にタイヤを交換せず給油とドライバー交代のみでピットアウトした。

 トップの65号車LEONは篠原拓朗のドライブでレース後半までステイアウト。2番手以下には2号車muta、52号車Green Brave GR Supra GT、7号車Studie BMW M4、31号車apr LC500h GTと続いた。

 65号車LEONは50周を走ってピットイン。こちらはタイヤを交換してコースに戻ったが、タイヤ無交換作戦の2号車muta、52号車Green Braveの先行を許して3番手に落ちた。

 その後方6番手では5号車マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号の藤波清斗が粘りの走りを見せて後続を抑えていたが、徐々にライバルのオーバーテイクを許すようになってしまい、最終的にホッブスコーナーで61号車SUBARUに追突されるような格好となりスピン。コース復帰に手間取ったため、65周目にFCY(フルコースイエロー)が出された。なお、61号車には後にドライブスルーペナルティが出された。

 2号車mutaは堤優威のドライブで快調にレースをリードしたが、2番手の52号車Green Brave吉田広樹はフレッシュなタイヤを履く65号車LEON蒲生尚弥に迫られる。そして70周目(GT300先頭集団は65周目)のリボルバーコーナーで勝負あり。65号車が2番手に上がった。さらに52号車吉田は7号車Studieのニクラス・クルッテンにも交わされ表彰台圏内から陥落した。

 65号車LEONは首位に追撃したが、残り周回数が足りず、結局2号車mutaが逃げ切ってトップチェッカー。昨年悔しいランキング2位に終わったが、チャンピオン奪取に向けて好スタートを切った。2位は65号車LEON、3位は7号車Studieだった。