1966年に静岡県でみそ製造会社専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第12回公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であり、検察側、弁護側双方の証人5人が同時に尋問を受ける対質尋問が行われた。検察側が請求した法医学者は「5点の衣類」の血痕に赤みは残らないとする弁護側鑑定結果について「一般論としてあり得るが、断言はできない」と述べた。

 衣類は事件から1年2カ月後、みそタンクから「赤み」が残った状態で見つかった。確定判決が犯行着衣と認定したが、弁護側は再審請求審で「1年以上みそ漬けされた場合は血痕に赤みが残らない」とする鑑定書を提出。東京高裁はこれらを基に再審開始を認めた。

 裁判官から弁護側鑑定の結果に関する意見を問われた検察側証人の2人は「一般的にそうなる」「異論はない」などと述べた。ただ、うち1人の久留米大の神田芳郎教授は、タンク内の状況が不明だと指摘。「赤みが残る可能性が低いということなら理解できるが、断言するのは不可能だ」と強調した。