いつの時代にも、トラブルは絶えない。誰もが中学校生活を経験しているはずだが、“今”の中学生にどんな問題が起きているのか、把握している大人は意外と少ない。
筆者(綾部まと)は新卒でメガバンクの法人営業部門に入行し、都内の学校法人を担当した。その取引先は中高一貫の学校法人で、当行が主力銀行だった。深い付き合いをする中で当時の銀行担当者から、現代の学生トラブルについて教えてもらってきた。

ネットやスマホ、マスクが生むトラブルである。筆者をはじめとした大人が学生だった頃には、考えられなかったものばかりだった。そんな令和の学校トラブルの中から、中学生に焦点を当ててご紹介する。

もちろん、筆者の担当した一部の学校法人に教えてもらったもので、全ての中学生がそうとは限らないことを前置きしたうえだが、お子さんがいる読者の方は手遅れになる前に、事実としてぜひ知っておいてほしい。

◆令和の学校トラブル①「ネットで加速する、未成年の“闇市”」

家未成年がトレーディングカードを売買することは、本来なら違法である。しかし、いつの時代にも悪いオトナは存在するものだ。

「中学生からカードを買い取る“闇市”が、都内に存在します。彼らは『ママかパパに了解とった?』と中学生に聞いて『うん』と言われると、それで良しとして取引します」

子供のスマホや学校のタブレットでは、履歴から闇市を検索したことがバレてしまう。彼らは親のパソコンを勝手に使い、闇市の情報を仕入れるのだという。

闇市の業者がリスクを冒してまで売買する理由は、レートの安さにある。未成年が売買できる場所は限られているため、本来の相場よりかなり安い価格で買い取れるのだ。

「ポケカは有名ですが、他にもかなりの値段で売れるのがドラゴンボールカード。今の中学生が小学生の頃にゲームセンターで取れたものなので、今は出回っていないカードも生徒たちは持っているんです」

大金を手に入れた彼らには、また別の悪いオトナが待ち構えている。

◆転売で得たお金で、ヴィトンを買う中学生も…

「ある日、男子生徒が『財布を失くした』と相談に来ました。体育の授業で着替えている間に盗られた可能性があるとのこと。なんと、ヴィトンの10万円近くする財布でした」

その子は普段からブランド物を持つタイプではなかった。不審に思って母親に連絡すると、「そんなもの買った覚えはない」と驚いていたという。どうやらドラゴンボールカードを転売して得たお金で、こっそり買ったらしい。

「未成年を対象に、ブランド品を売買する業者がいるみたいです。正規の店では売ってくれませんからね。彼が持っていた財布も、正規品かどうか怪しいものですが……」

結局、彼の財布は見つからなかったとのこと。その財布も未成年をターゲットにした、別の業者に転売されているのだろうか。

◆令和の学校トラブル②「親が使わないスマホをこっそり使う」

スマホ子供の観察眼はあなどれない。使わなくなったスマホを家に放置している親は、特に注意が必要かもしれない。

「ある女子生徒が、クラスメイトとのトラブルで相談に来ました。女子グループのInstagramのストーリーにいいね!しなかったから、仲間外れにされていると。正直よくあるトラブルです。しかし母親に連絡したところ、全く別の種類のトラブルに発展しました」

母親は「うちの子にスマホを与えたことはない。どこで手に入れたの?」と、驚愕していたのだ。

◆親の監視から逃れたい子供たち

「どうやら父親の画面が割れたスマホが、家の引き出しにしまわれていたようです。それを女子生徒が街中の修理屋に持っていき、勝手に直した。だからインスタも見れたみたいです」

父親は新しいスマホを使っていたので、古いスマホの存在をすっかり忘れていたようだ。しかし今の中学生はキッズケータイを持っていたり、親のスマホを使わせてもらっていることが多い。なぜそこまでして、自分だけのスマホが欲しいのだろうか。

「キッズケータイや親のスマホでは、やり取りが親に見られてしまいます。時間を制限できる機能も、彼らにとって鬱陶しいのでしょうね」

彼らは塾や習い事で日中は忙しいため、スマホを使いたくなるのは夜だという。ちょうど思春期や反抗期が始まる時期で、親の監視から逃れて自由に使いたいという気持ちは分からないでもない。

◆令和の学校トラブル③「マスクを外すなら給食を食べない」

マスクコロナ禍で“マスク美人”という言葉が流行した。この言葉は中学生の間でも流行っているという。これはマスクを外した素顔を見られて、“がっかりされるのが怖い”という気持ちに繋がっていく。

「マスクの着用義務が外れても、マスクを付けて登校する生徒は半数を超えています。女子は特に多いですね。『給食の時に、教室の明かりを消してしまう子がいる。何とかして欲しい』という声が上がったクラスもありました」

極端な例だが、顔を見られるのが嫌で給食を食べない、という女子生徒もいたという。深い仲になれば素顔を見せる必要性が出てくると大人なら分かるのだが、そこまで考えが及ばないのだろう。中学生らしいと言えば、中学生らしいのかもしれない。

◆子供のトラブルは、親が100%悪いわけではない

今回ご紹介したトラブルは、親を悩ませるものばかり。子供がトラブルに巻き込まれると「うちの育て方が悪かったんだろうか……」と落ち込んでしまう親が多いらしい。

「親御さんたちには、自信をなくさないで欲しいです。教師の私たちですら、予想もつかないトラブルばかり。時代が進むのが早すぎるんです」

春からは新生活、新学期が始まる。新しいものに出合うということは、それだけトラブルに巻き込まれるリスクも増えるということ。いつもより少しだけ、子供の様子に注意して観察した方がいいのかもしれない。

<文/綾部まと>



【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother