【メジャーリーグ通信】

 メジャーリーグでは新しい球種が誕生してファンの目を引き付ける一方で、よく耳にした球種が、いつの間にか消えてしまうことがある。

■新球種=スイーパー

「横の曲がりの大きいスライダー」のことで、昨年、一般的になった。このタイプのスライダーはこれまで多くの投手が武器にしてきた。ダルビッシュはこのタイプのスライダーで目を見張る活躍をしたが、スライダーの中に含まれ、特別扱いされることはなかった。

 それが一昨年から独立した球種になったのは、ドジャースとヤンキースの投手が、このボールを頻繁に使うようになったことがきっかけといわれる。しかし、最大の理由はメジャーリーグの看板選手になった大谷翔平がこのボールを多投して三振を量産、魔球扱いされるようになったことだ。

 ただ、スイーパーとスライダーの境界線は、あいまいだ。

 投手大谷は左打者に対してはタテの変化が大きいタイプのスライダーを多投するが、このタイプも一緒くたに「スイーパー」に分類されている。球種を細かく分類したがる日本のファンの感覚だと大ざっぱすぎるように見えるが、米国では問題にならないので、これは野球文化の違いというしかない。

■復活した球種=フォークボール

 MLBでは1970年代から80年代にかけて、フォークボールを武器にする投手がたくさんいた。ヒジを壊す元凶という説が流布し、落ち方は小さいがスピードが出るタイプのフォーク=スプリッターに乗り換える投手が続出した。そのため「フォークボール」という言葉は死語と化し、野茂、佐々木、上原らの大きく落ちる一級品のフォークボールは「スプリッター」に分類された。しかし、昨年メッツに「お化けフォーク」という異名のあるボールを武器にする千賀滉大が入団し三振を量産。ファンがフォークボールという言葉を特別視するようになった。そこで、MLBは「死語」と化していた「フォークボール」を復活させ、千賀限定で使うようになった。

■死語になりつつある球種=ツーシーム

 ステロイドでパワーアップした打者が本塁打を量産した90年代から2000年代にかけて、メジャーの投手は小さく沈む軌道になる速球=ツーシームを多投して打球が上がりにくくした。特に一発リスクが高い日本人投手にとってツーシームの習得は必須事項だった。

 このツーシームには2種類あり、変化の小さいものはツーシームのままだが、大きくシュートしながら沈む軌道になるものはシンカーと呼ばれた。しかし10年代になると、両者の間に明確な差はないとみなされるようになり、ツーシーム系のボールは「シンカー」に統一され「ツーシーム」という球種は、死語になりつつある。

(友成那智/スポーツライター)