「チャンピオンズリーグ(CL)の大馬鹿者と言われたことについて我々は今どのように対処すればいいのだろう?」とシャビは自問自答した。

 その直前にバルセロナはナポリに勝利(3−1)した。内容的にもコンビネーションを駆使しながら、常に相手に脅威を感じさせる、素早いトランジションに基づいたサッカーを披露しての完勝だった。今シーズンのバルサの試合で、目にしたことのないクオリティの高さだった。

 歓喜の場となったモンジュイックは、ついに圧力鍋と化した。バルサは生まれ変わり、選手たちは勝利と準々決勝進出(2戦合計スコアで4−2)を祝った。つい数週間前までは、このまま何もできないままシーズン終了を迎えると危惧されていただけに、その心境は理解できた。

 1か月以上前に今シーズン限りでの退任を明言した指揮官に率いられたバルサは、夏が訪れるまで、できる限りのことをしている。
 
 にもかかわらず、記者会見場に姿を現したシャビは憤慨していた。「復讐は冷めた皿でするもの」とはよく言ったものだ。彼はシャフタール戦の敗北後(0−1)の本紙のマッチレビューを巡り、どれだけの間、反芻し、気を揉み、そして他人を責めたのだろう。

 手負いの相手に不覚を喫したバルサはまたしてもヨーロッパリーグ行きの危機に直面していた。そのマッチレビューには「バルサはヨーロッパの大馬鹿者」というタイトルが付いていた。

 もっとも筆者のラモン・ベサは批判の矛先をチームよりもクラブに向けており、冒頭では、土砂降りの雨に耐えながらチームを率いたエルネスト・バルベルデとキケ・セティエン時代のCLにおける歴史的大敗を振り返っている。

 しかし、シャビは絶対的な打たれ弱さの表われとして、大馬鹿者は自分だけのことと思い込んだ。そして、彼はそのマッチレビューを自身への最大限の侮辱と受け取った。

 報道陣を前にしたシャビの冒涜は、怒りや敗北に対処する能力がないことを示している。まして今回は勝利を収めた後だった。昨年の11月以来、マイナスの感情をため込み、今シーズン最も重要な勝利を手にした日にその鬱積を晴らした。その間、彼の頭の中に渦巻いていた疑念と不安の発露以外の何者でもない。
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 それほどまでにシャビの苦悩は深いのだろう。チームのプレーに胸を張ることができる日にさえ、誰かに借りを返すことなくサッカーについて語ることができなかった。ましてやラモン・ベサは、スペイン、カタルーニャのスポーツジャーナリズムの重鎮である。ピッチ内外を問わずバルサを巡る現実を語らせれば、随一のスペシャリストだ。

 そんな周囲から尊敬を集める人物にシャビは啖呵を切った。彼は、記者が太鼓持ちではない、あるいは太鼓持ちであってはならないことを理解していない。我々は、ピッチ内外で起こっていることを解釈し、読者に簡潔・明瞭に伝えるために存在する。


 
 番記者であっても、取材の対象であるチームよりも、遂行する職業に、個人的な人間関係よりも所属する新聞社に、その責務を負っている。

 批判と不当はイコールではないのだ。その批判に苦しむから、不当と感じるのだ。そして、それはどちら側にも言えることだ。

文●ナディア・トロンチョーニ(エル・パイス紙スポーツ部編集長)
翻訳●下村正幸

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