パリ五輪を戦うサッカー日本代表のメンバーが誰になるのか。ファンの注目が集まっている。海外組の招集が難しい、OA枠も融合の期間が短いなど状況は複雑。そのなかで識者3人に18人を選んでもらった。


パリ五輪の出場権がかかったAFC U23アジアカップで見事優勝したU−23日本代表。このなかから何人が本大会へ行けるのか photo by Getty Images

【今回は複雑な状況が絡む難しい選手選考】

浅田真樹(スポーツライター)

FW:上田綺世(フェイエノールト)、細谷真大(柏レイソル)、平河悠(FC町田ゼルビア)、三戸舜介(スパルタ・ロッテルダム)、山田楓喜(東京ヴェルディ) 
MF:鈴木唯人(ブレンビー)、荒木遼太郎、松木玖生(以上FC東京)、藤田譲瑠チマ、山本理仁(以上シント=トロイデン) 
DF:伊藤洋輝(シュツットガルト)、大畑歩夢(浦和レッズ)、板倉滉(ボルシアMG)、高井幸大(川崎フロンターレ)、木村誠二(サガン鳥栖)、関根大輝(柏レイソル) 
GK:鈴木彩艶(シント=トロイデン)、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)

 五輪における男子サッカーが現行方式(出場資格は23歳以下。24歳以上は3人まで)で行なわれるようになって以降、日本の出場は今年のパリ五輪で8大会連続8回目。その間、登録メンバー選びにまつわる"トラブル"がつきものだったが、今大会はこれまで以上に難しい選手選考になりそうだ。

 というのも、オーバーエイジ(OA)枠の扱いでもめるのは毎度のことながら、パリ五輪に関して言えば、難問はそれだけにとどまらず、しかもそれらが複雑に絡み合っているからである。

 今年4〜5月にかけて行なわれた最終予選(U−23アジアカップ)は、言い換えれば、パリ五輪本番に向けての準備という意味で、およそ1カ月にわたる絶好の強化キャンプでもあった。実際、ピッチ内では志向するサッカーが熟成され、ピッチ外ではチームの一体感が醸成されている。

 ところが、その後にメンバーの多くが入れ替わってしまうとなると、せっかく1カ月かけて作ったチームがまるで違うものになってしまう可能性がある。

 だとすると、五輪本番も最終予選を戦ったメンバーを中心にし、そこに加える(OAも含めた)メンバーは最小限にとどめる。それが、現実的な判断になるのだろう。

 例えば、今回と同形式で最終予選が行なわれた2016年リオデジャネイロ五輪(それでも最終予選開催は1月だったため、今回より3カ月以上も早かったが)では、OAの3人を除けば、最終予選に出場せずに五輪本番でメンバー入りしたのは、GK中村航輔だけだった。

 しかしながら、今回の場合、(最終予選に出場していないという意味での)新戦力候補がOAだけではないのが、悩ましいところだ。

 つまり、五輪世代の海外組のなかにも最終予選に招集できなかった選手が少なからずおり、五輪本番を前に新たに加えたい選手の候補がこれまでになく多いのである。

 仮にOAが3人、五輪世代の海外組が3人、それぞれ新たに加わるとすれば、登録メンバー18人のうち、3分の1は最終予選に出場していない選手ということになる。

 だからといって、彼らを加えて、もう一度まとまったキャンプをしようにも、五輪本番まで残された時間はわずかに2カ月あまり。その時間的余裕はない。

 やはり、新たに加わる選手の数は絞らざるをえない......。

 ただ、最終予選に招集できなかった五輪世代の海外組のなかには、それ以前の代表活動には何度も参加していた選手がおり、彼らはOAと違い、チームへの融合が比較的容易に進むとも考えられる......といった具合で、とにかく事態はややこしい。

 つまるところ、最終予選のチームがベースになるのは間違いなく、そこにどれだけOAを含めた新戦力を加えるのか。

 メンバー選考は、そのさじ加減次第になるのだろう。

【U−23で臨んだほうが日本サッカー界にとって有益】

杉山茂樹(スポーツライター)

FW:細谷真大(柏レイソル)、藤尾翔太、平河悠(以上FC町田ゼルビア)、斉藤光毅、三戸舜介(以上スパルタ・ロッテルダム) 
MF:鈴木唯人(ブレンビー)、荒木遼太郎、松木玖生(以上FC東京)、藤田譲瑠チマ、山本理仁(以上シント=トロイデン) 
DF:大畑歩夢(浦和レッズ)、木村誠二(サガン鳥栖)、西尾隆矢(セレッソ大阪)、高井幸大(川崎フロンターレ)、関根大輝(柏レイソル)、半田陸(ガンバ大阪) 
GK:小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、野澤大志ブランドン(FC東京)

 オーバーエイジ(OA)は五輪でなにより結果が欲しければ使うべきだろう。その3人のレベルと本大会での結果は比例関係にある。希望する選手を招集できるかできないか。所属クラブがそれを許すか許さないかで結果が変わる。これ以上ファジーな競技も珍しい。真のU−23世界一決定戦ではない。何を意味する世界一決定戦なのか。五輪サッカーのメダルの重みは、ほかの競技に比べて軽いと言わざるを得ない。

「1968年メキシコ五輪以来のメダルを」と言いながら2012年(ロンドン五輪)、2021年(東京五輪)は4位に終わった。あと一歩のところで涙を飲んだが、残念がる気持ちはほどなくして薄れていく。出場するからには好結果を期待したいが、そのために多大なリスクを冒す必要はないと考える。

 OAの3枠をフルに使えば、U−23の選手の出場機会を同じ数だけ奪うことにもなる。諸刃の剣でもある。純粋なU−23日本代表で臨むことに全くためらいはないとは筆者の考えだ。そのほうが日本サッカー界にとって有益だと考えるからだが、こうした大きな方針を定めるのは協会の宮本恒靖会長であり、影山雅永技術委員長だ。それが筋である。この件についての責任を大岩剛監督に及ばせるべきではない。

 U−23に属する日本人選手ですでに欧州で一定の評価を得ている久保建英も、呼ぶ必要がないと考える。結果に大きな影響を与えそうな選手であることは確かだが、ほかの選手にプレー機会を与えるほうがアンダーカテゴリーの強化の、模範的な発想だと考える。

 先のU−23アジアカップには出場しなかった久保を除く欧州組は、所属チームが許せば招集すべきだろう。欧州で場数を踏んでいる経験値は、若いチームにとって不可欠だ。少なくとも今季、実績を残している鈴木唯人、三戸舜介、斉藤光毅の3人は招集したくなる。

 なかでも真ん中付近でボールを収める力を備えた、鈴木を有効に使いたい。攻めていながらスコアにつながらない。中央からの攻め手が少ない。これが大岩ジャパン最大の問題だとすれば、得点力も兼ね備えたこの選手は外せない存在になる。

 迷ったのはMF陣で、山本か川﨑颯太(京都サンガF.C.)か荒木かの選択だった。これまでの流れで行けば荒木の順番は低かったが、U−23アジアカップの流れを重視して加えてみた。山本と川崎の比較では左利きを優先した。FW陣では山田楓喜(東京ヴェルディ)のキック力も捨てがたい魅力に見えるが、縦への突破力を重視して藤尾、三戸、平河、斉藤を優先した。

【複数のポジションができる選手の見極めは簡単ではない】

小宮良之(スポーツライター)

FW:細谷真大(柏レイソル)、藤尾翔太、平河悠(以上FC町田ゼルビア)、斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)、山田楓喜(東京ヴェルディ) 
MF:鈴木唯人(ブレンビー)、荒木遼太郎(FC東京)、藤田譲瑠チマ、山本理仁(以上シント=トロイデン)、福井太智(ポルティモネンセ)、山根陸(横浜F・マリノス) 
DF:バングーナガンデ佳史扶(FC東京)、木村誠二(サガン鳥栖)、西尾隆矢(セレッソ大阪)、高井幸大(川崎フロンターレ)、関根大輝(柏レイソル) 
GK:小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、鈴木彩艶(シント=トロイデン)

「オーバーエイジ(OA)枠3人は誰に?」

 パリ五輪出場決定後、その議論が活発に展開されている。個人的には、FW上田綺世(フェイエノールト)、MF守田英正(スポルティング)、DF板倉滉(ボルシアMG)を入れることで、「縦のラインがどっしりとし、戦いに幅が出る」と考える。同時に弱いポイントへの補強にもなるだろう。

 しかし現実的には、「パリ世代で戦う」と覚悟し、準備を整えるべきではないだろうか。

 そもそも、OAは誰を選ぶか、という話で収まらない。なぜなら、五輪はクラブに派遣義務がなく交渉ありきで、それは難航するからだ。パリ世代の久保建英でさえ、すでにクラブに難色を示されている。今年1月のアジアカップでも、招集されたあとコンディションが下降したことを考えたら、当然の判断と言えるだろう。

 過去の五輪でも、OAは必ずしも補強につながらず、足手まといになることもあった。ファーストチョイスではないOAを選ぶのは本末転倒。2008年の北京五輪メンバーのように、OAなしで惨敗しても、本田圭佑や長友佑都などが挫折をバネに羽ばたいていったケースもあるだけに...。

 率直に言って、パリ五輪もU−23アジアカップで出場権を勝ち取った選手が主力になるべきだろう。大会ベストイレブンに相当する小久保玲央ブライアン、藤田譲瑠チマ、荒木遼太郎などは外せない。彼らが本大会の舞台にも立つのが正当だ。

 もっとも、大岩剛監督が率いるようになったU−21代表からの活動が現チームの原型だけに、U−23アジアカップで招集できなかった欧州組の派遣交渉には手を尽くすべきだろう。

 デンマークでカップ戦も含めて二ケタ得点の鈴木唯人、オランダ1部で攻撃の中心になっている斉藤光毅、バイエルンのセカンドチームで定位置をつかんでポルトガル1部でも試合に出ている福井太智などは、戦力アップの人材になる。言うまでもないが、異国で試合を重ねてきた選手は必然的に適応力も高く、正念場で力を発揮するはずだ。

 問題は、(U−23アジアカップの23人から18人に)人数がさらに絞られる点だろう。複数のポジションができる選手を選ぶ必要もある。その見極めは簡単ではない。

 個人的には、横浜F・マリノスでインサイドハーフ、アンカー、両サイドバックを経験している山根陸のような"サッカーIQの高い"選手も選択肢に入れるべきだと考える。FC東京で頭角を現している俵積田晃太のような"崩し"に特化したサイドアタッカーも推したい。欧州スカウトだったら垂涎の的のはずだが、18人だと前線でユーティリティとなる藤尾翔太のような選手が優位か。

 限られた人数での短期決戦だけに、組み合わせも大事になるだろう。