中間も充実しているというコスモキュランダ
中間も充実しているというコスモキュランダ

皐月賞2024

[GⅠ皐月賞=2024年4月14日(日曜)3歳、中山競馬場、芝内2000メートル]

【トレセン発秘話】弥生賞を6番人気で勝ったコスモキュランダ。伏兵だったことで「フロックかも」「本物だ」と評価は二分されているが、この中間、馬はさらに成長しているという。管理する調教師の“師匠超え”をテーマに取材を重ねた垰野忠彦記者のリポートをどうぞ。

 7日の桜花賞で、開業6年目の加藤士厩舎が誇るクラシック戦線“3本の矢”の1本目コラソンビートがはかなく散った。師の右腕・伊藤助手は1月の小倉滞在から栗東へ移動し、全身全霊で仕上げに打ち込んだが、GⅠの壁はかくも厚かった。

 勝ち馬は加藤士師の師匠にあたる国枝厩舎のステレンボッシュ。これも試練だが陣営に悲壮感はなく、皐月賞には次なる矢・コスモキュランダがスタンバイしている。

 前走の弥生賞はM・デムーロを背に早めの仕掛けから直線で抜け出て、シンエンペラーの追撃をかわした。1分59秒8(良)はレースレコード。父のアルアインは同舞台の皐月賞で1分57秒8(良)のレースレコードを持つだけに、間違いなくコース適性はある。

 中間は1週前に小林勝(レースはモレイラ)を背に南ウッドで3頭併せ。僚馬をものともせず6ハロン80・2ー11・7秒で駆け抜けた。「レースと違い稽古はあまりやる気のない馬ですが、後ろからビッチリ負荷をかけました。時計は予定より速くなったものの、ダメージはないですね。カイ食いは落ちず、毛ヅヤもいい。中身も充実して、一段階スイッチが入った印象です。鞍上も『久々に乗りましたが随分変わりましたね』と驚いていました。思った以上の成長力を見せています」(山﨑助手)

 どこかで聞いたコメントだと思いきや、コラソンビートが京王杯2歳Sでレコード勝ちした直前とほぼ同じだった。陣営の想定以上の時計で追い切り、想像を超える成長を見せている。まさに馬が充実しているのだろう。

 課題はゲート。「駐立が悪くてヨレて出てしまうので、中間は駐立だけ確認してすぐに出す動作を繰り返し、なるべくストレスのないように慣れさせています」。ある程度発馬が決まれば、あとはスタミナを生かすだけ。

「上がり勝負はキレる馬に劣るので、ペースを見ながら自分でレースをつくりたいですね。前走は理想的でした。ある程度流れてくれれば」(同助手)

 僚馬コラソンビートが栗東滞在中に胸を借りたシンエンペラーを始め、矢作厩舎は怒涛の3頭出しを仕掛けてくる。矢作師は加藤士師が技術調教師時代に世話になった“第2の師匠”でもある。

 再度GⅠでの師匠超えの試練を課せられた加藤士師は「荒れ馬場は合っているし、スムーズならチャンスがあるはず」と闘志を燃やす。マジックマンことモレイラの2週連続Vで、祖父ディープインパクト、父アルアインに続く3代制覇なるか。

著者:垰野 忠彦