老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは、難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。

今回は、60歳のパート主婦が、将来もらえる年金を増やす方法をアドバイスします。

■Q:今年60歳になったパート主婦です。65歳からもらえる年金を今さら増やせますか?
「今年60歳になったパート主婦です。私はずっと会社員の夫の扶養に入っています。過去に国民年金保険料を支払っていなかった時期があります。これから、将来もらえる年金を増やす方法はありますか?」(60歳・パート)

■A:60歳から65歳未満まで国民年金に任意加入しましょう
65歳からもらえる老齢基礎年金の支給を受けるには、国民年金に20歳以上60歳未満の40年間(480カ月)加入し、国民年金保険料を支払う必要があります。480カ月の間に、未納期間(支払っていない期間)がある人は、満額の81万6000円(令和6年度、新規裁定者)をもらうことができません。したがって、年金保険料を支払っていない期間分、もらえる年金が少なくなってしまいます。

支払っていなかった国民年金保険料は、過去2年前までさかのぼって支払うことができますが、2年以上経過した場合は、保険料を支払うことができません。通常、国民年金保険料を支払うことができるのは、60歳未満の人までとなりますが、60歳になるまでの480カ月のうち、支払っていない期間がある人は、60歳以上65歳未満の間まで、国民年金に任意で加入することができます。

この期間、年金を支払う人を「任意加入被保険者」といいます。1カ月、保険料を支払うと、年額で約1700円(81万6000円×1カ月÷480カ月)、もらえる年金が多くなります(令和6年度の老齢基礎年金等の満額での計算)。相談者も、国民年金に任意加入することで年金を増やしてみてはいかがでしょうか。

相談者は、パートとして夫の扶養の範囲内で働いているため、厚生年金には加入していないとのこと。厚生年金に加入していない人は、加入している人と比べると、将来もらえる年金が多くありません。老齢基礎年金に上乗せされてもらえる老齢厚生年金がもらえないからです。それを補う制度として国民年金の「付加年金制度」というものもあります。

この制度では、国民年金の第1号被保険者・任意加入被保険者が、毎月の保険料に加えて月額400円の付加保険料を納めると、老齢基礎年金とあわせて付加年金がもらえます。付加年金額(年額)は「200円×付加保険料納付月数」で計算します。2年以上受け取ると、支払った付加保険料以上の年金をもらうことができます。国民年金の任意加入とあわせて、付加年金制度の利用も検討してみましょう。

また、相談者が夫の扶養の範囲から外れないように、と収入をあえて抑えているのであれば、扶養から外れて自分で厚生年金に加入するのも一考だと思います。自分で厚生年金保険料を負担することになりますが、将来もらえる老齢年金額が多くなりますし、障害年金の内容も充実します。扶養内にこだわらずに収入アップを考慮してはいかがでしょうか。

監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)

都市銀行や保険会社、保険代理店での業務経験を通じて、CFP、証券外務員の資格を取得。相談業務やマネーセミナーの講師、資格本の編集等に従事。日本FP協会の埼玉支部においてFP活動を行っている。

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