4月28日(金)、ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催されているWEC世界耐久選手権第3戦スパ6時間レースの予選が行われ、51号車フェラーリ499P(フェラーリ・AFコルセ)が今季初のポールを獲得したかと思われたが、四輪脱輪により当該車両の最速タイムが抹消され、小林可夢偉がドライブしたTOYOTA GAZOO Racingの7号車トヨタGR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ/可夢偉/ホセ-マリア・ロペス)がポールポジションを獲得している。

 予選日の朝は雨が降りその影響で現地11時から行われたフリープラクティス3回目(FP3)はダンプ路面での実施となったが、同日17時から開始された予選までに天候は回復し、路面も完全なドライコンディションとなった。

 LMP2クラスやハイパーカークラスの予選に先立って行われたLMGTEアマクラスの予選ではセッション中盤、各車がアタックに入ろうかというタイミングでPJ.ハイエット駆る56号車ポルシェ911 RSR-19(プロジェクト1・AO)がオールージュの出口ラディオンでスピン。アウト側のエスケープゾーンを突っ切るかたちで大きなクラッシュを喫し赤旗が出される。

 幸いドライバーは無事だったが、56号車ポルシェはフロントを中心に大破しており、決勝レースの出場に黄色信号が灯る状況となっている。

 セッションは残り7分から再開。実質的にワンアタックでの予選になった。そんななか25号車アストンマーティン・バンテージAMR(ORT・バイ・TF)のアーマド・アル・ハーシーが赤旗前のベストタイム2分17秒474をコンマ2秒ほど上回る2分17秒216でターゲットタイムを設定した。

 この直後から続々とアタックを終えたマシンがフィニッシュラインを通過していき、ライアン・ハードウィックの88号車ポルシェ911 RSR-19(プロトン・コンペティション)が2分19秒481で暫定2番手、33号車シボレー・コルベットC8.R(コルベット・レーシング)を駆るベン・キーティングが2分19秒150で暫定3番手に。女性ドライバーチームのアイアン・デイムス85号車ポルシェ911 RSR-19のサラ・ボビーは2分19秒150を記録し2番手となった。

 結局25号車のタイムを上回るクルマは表れず、今戦のBoPでわずかながら恩恵を受けているアストンマーティンがクラスポールポジションを獲得している。今大会でも“本命”とみられていた33号車コルベットは、タイヤをロックアップさせてしまったことがその後のタイムアップを妨げた可能性がある。

 日本勢は、星野敏がドライブした777号車アストンマーティン・バンテージAMR(Dステーション・レーシング)がクラス9番手、木村武史がアタッカーを務めた57号車フェラーリ488 GTEエボ(ケッセル・レーシング)が同10番手に続く結果となっている。

■強豪チームがトップ3に並んだLMP2クラス

 オレカ07の実質ワンメイクとなっているLMP2カテゴリーの予選は、GTEアマクラス予選での赤旗中断とセッション終了後のコース清掃の影響を受け予定時刻から約10分遅れてスタートした。

 最初のターゲットタイムは10号車オレカ(ベクター・スポーツ)のガブリエル・オーブリーが設定した2分07秒315。これを28号車オレカ(JOTA)のピエトロ・フィッティパルエィが2分06秒556で塗り替える。

 セッション残り5分となって元F1ドライバーのダニール・クビアト駆る63号車オレカ(プレマ)が、JOTAを100分の5秒上回りクラス首位に浮上する。一方の28号車はピットに戻り予選終了の構え。直後、トム・ブロンクビスがステアリングを握る23号車オレカ(ユナイテッド・オートスポーツ)が2分05秒979でトップを奪った。

 残り2分、チームWRTの41号車オレカのルイ・デレトラズが2分06秒318で2番手に割って入り、姉妹車31号車オレカのロビン・フラインスも4番手に食い込む。このあと上位でタイムを伸ばすクルマはなくユナイテッド・オートスポーツの23号車がポールを獲得。WRTの41号車とプレマ63号車が続くトップ3となっている。

■名手ハートレーがまさかのクラッシュ

 ハイパーカークラスの予選は定刻から10分遅れの現地18時にスタートが切られた。それからまもなく、まだタイヤが温まっておらずアタックにも入っていなかった8号車トヨタGR010ハイブリッドが、ラディオンの出口で突如姿勢を乱し、スピン状態でタイヤバリアにクラッシュしてしまう。

 ドライブしていたブレンドン・ハートレーに怪我はなかったが、クルマは右リヤからサイドにかけての広範囲でダメージを負い、この回収のためセッションは赤旗によって中断となった。

 予選再開は残り13分弱から。コンディションは気温16℃、路面温度22℃とGTEアマクラスの予選時から各2〜3℃下がっている。

 残り時間7分、アントニオ・ジョビナッツィがドライブする51号車フェラーリが、ラ・ソース(1コーナー)の出口でスピンを喫し再始動に時間が掛かっている。それからまもなく、姉妹車50号車のミゲル・モリーナが2分00秒836を記録しトップに立った。このタイムは今週末最速だ。

 続いてフィニッシュラインをくぐった94号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)のグスタボ・メネゼスは3秒遅れて暫定2番手。僚友93号車プジョー9X8が暫定3番手に続く。50号車フェラーリはセクター1、2でベストを刻みさらにタイムアップを狙ったが、フレデリック・マコウィッキ駆る5号車ポルシェ936(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)に蓋をされるかたちで更新ならず。

 残り3分、2号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・レーシング)のステアリングを握るアール・バンバーが2分01秒114で2番手に。このスパでの追加された2台のハイパーカー・エントリーのうちの1台である3号車キャデラックVシリーズ.Rがセバスチャン・ブルデーのドライブで3番手に食い込む。

 8号車を失ったトヨタは、7号車を駆る可夢偉がセクター2で全体ベストを灯し2分00秒812といタイムで50号車をかわしてトップに。1コーナーでのスピンから再始動に成功した51号車は2分00秒973を記録して3番手に入った。

 残り1分となって2号車キャデラックが自己ベストを更新するも4番手どまり。直後51号車のジョビナッツィがセクター2、3で自己ベストを更新し2分00秒777でトップを奪った。7号車トヨタと50号車トヨタはすでにピットに戻っているため、51号車が今戦のポールシッターに決定……したかと思われたが、ジョビナッツィの最終アタック中にトラックリミット違反があり、当該のベストタイムが抹消される。これにより51号車はセカンドベストの採用で3番手に降格。

 一方のポールポジションは正規の最速タイムを記録していた7号車トヨタGR010ハイブリッド、TOYOTA GAZOO Racingの手に渡った。一度は喜びに湧いたフェラーリ陣営は予選2番手、3番手から明日の決勝を迎えることになっている。

 トップ3の後方にはブルーとイエロー2台のキャデラックが続き、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963が3号車キャデラックとともに3列目からのスタートに。4列目には“ニューカマー”ハーツ・チーム・JOTAの38号車ポルシェ963と、ハイパーカークラス3年目の708号車グリッケンハウス007 LMHが並んだ。プジョーの2台は5号車ポルシェを間に挟み9番手、11番手となっている。

 ル・マン24時間の“前哨戦”に位置づけられるWEC第3戦スパの決勝は、29日・土曜の現地12時45分(日本時間19時45分)に6時間レースのスタートが切られる予定だ。